研究課題/領域番号 |
20H01503
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
大木 良子 法政大学, 経営学部, 教授 (20612493)
|
研究分担者 |
若森 直樹 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 講師 (50770921)
石原 章史 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (80643668)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | プラットフォーム / マルチホーミング / 競争政策 |
研究実績の概要 |
2021年度は、まず2020年度に行った調査の結果をとりまとめ、政策立案者や関心の近い研究者が集まる研究会において2回報告する機会を得た。(2021年10月経済産業省プラットフォームエコノミクス研究会、小樽商科大学土曜研究会・SWEO)いずれの報告の場においても、デジタルプラットフォームのマルチホーミングの実態を計測したデータとその分析の新奇性に対して、研究者、政策立案者双方からの強い関心を得た。また、本研究が行っている消費者に対する調査の継続の必要性も強く指摘された。 また2021年度は、前年度に実施した調査から得られた仮説をもとに、新たに分野横断的に事業展開をしているプラットフォーム企業に焦点を当てた調査を実施した。1つの企業グループが、旅行予約、フリーマーケット、決済等、全20前後の複数分野のプラットフォーム市場で事業展開を行っており、それらが共通ポイント付与(数量割引の一種)や、アカウントの共通化などの連携を広く展開している。調査では、当該グループのサービスの利用割合が他サービスの利用状況によってどのような影響を受けるのか、また、当該市場におけるシングルホーミング・マルチホーミングどちらの割合が高まるのかに着目して分析を行った。このような分野横断的な調査はこれまで大規模に調査されておらず、プラットフォーム市場のより一層の理解に大きな貢献ができると考えている。例えばグループ内事業複数利用のドライバーとなるような事業を見極めるための分析を行うなど、様々な視点から分析を行っている。 理論研究では、1本の論文の公刊と2回の学会報告を行うことができた。これらの理論モデルをデータから得られた示唆を盛り込む形で拡張する作業に取り組んでいる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通りである理由としては、既に初期の結果を取りまとめ、政策立案者や研究者に報告しフィードバックを得ていること、また得られたデータから理論分析すべきいくつかの課題も得られていることが挙げられる。加えて、2020、2021年の調査を踏まえ調査設計に修正を加えた上で、2022年、またそれ以降も同様の調査の実施見込みが立っており、消費者のプラットフォーム選択についての充実したパネルデータの構築が可能になっている。このパネルデータは実証分析に活用することが見込まれている。 2020年、2021年に得られたデータについては、2週に一度の定期的な打ち合わせを設定し、共同研究者3名で緊密に連携しながら分析の方針や結果を共有しあっている。これにより、理論分析、実証分析両面からのアイデア出しや、基礎分析をスピーディーに進めることができている。 加えて、2021年度後半から、データを経済学的視点から整理して取りまとめる経済学専門書の執筆を検討しており、一部準備を始めている。この作業により、データから得られた示唆をなるべく時間をおかず、データが新しいうちに公表することが可能になると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度以降は、以下の4点に注力する。 1.これまでに実施した消費者アンケートの結果を分析しアンケート調査の設計を見直し修正した上で継続的な調査を行う。これにより時系列的なデータベースを構築し、経年での実態の把握に加え、実証分析を行う。特に同一消費者の経年変化については、これまで取り組まれてきていないため、本研究によりデータベース化することにより、消費者データそのものとしての価値に加え、新しい視点での実証分析が可能になると考えている。そのため、本研究期間内で予算の許す限り継続的に調査を続けていき、その後の継続的な調査の重要性について政策立案者等からの理解を得られるように努める。 2.2021年度に新たに調査を開始した、分野横断的なプラットフォームの消費者の利用実態のデータを整理し、消費者のプラットフォーム選択、またマルチホーミングの有無が、複数事業展開とどのように関連しているかについて明らかにする。 3.これまでに得られたデータを整理し、消費者のデータに基づいたプラットフォームビジネスの経済学の専門書として取りまとめるために継続的に執筆を行う。 4.消費者のマルチホーミングと同一プラットフォーム企業(グループ)内の分野横断的なプライシングを抱き合わせ販売の理論モデルを用いて分析し、理論的な整理を行う。 以上の調査とその結果の整理、および理論分析より得られた成果について、その都度速やかに公表することを目指している。複数回の報告を経て、各方面からのフィードバックを得ながら、日本語での専門書執筆により、なるべく早く得られたデータを経済学的に整理して公表することを目指している。またそれらの整理に基づいて、実証論文、理論論文への発展を目指している。
|
備考 |
第4回経済産業省プラットフォームエコノミクス研究会における本研究の調査結果報告について、その概要を既に文章で取りまとめており、近日中に上記の経済産業省プラットフォームエコノミクス研究会のWebページにおいて公開される予定である。
|