研究課題/領域番号 |
20H01518
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 中央大学 |
研究代表者 |
吉見 太洋 中央大学, 経済学部, 准教授 (30581798)
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研究分担者 |
吉田 裕司 滋賀大学, 経済学系, 教授 (40309737)
鯉渕 賢 中央大学, 商学部, 教授 (60361672)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 決済通貨 / 輸出経験 / 決済条件 / 交渉 / タイ / トルコ / 税関データ / 中小企業 |
研究実績の概要 |
本研究課題では「国際貿易における決済通貨は何によって決まっているか?」という問いに対し、以下三つの研究目的を設定し、主に実証分析による検証を進めている。第一の目的は、「決済通貨の決定に、輸出側と輸入側の間の相対的な交渉力がどういった役割を果たしているのかを明らかにする」ことである。第二の目的は、「企業の輸出経験蓄積が、決済通貨選択に与える影響を明らかにする」ことである。第三の目的は、「決済通貨選択と、貿易信用などその他の契約事項の選択との相互関係を明らかにする」ことである。これら三つの研究目的を達成するため、タイとトルコの税関データおよび、2019年度に実施した中小企業向けアンケート調査の結果を用いて研究を進めている。 2022年度の研究実績として主なものは、一編のディスカッションペーパー出版(RIETI Discussion Paper)と、一回の国内学会報告(日本国際経済学会2022年度春季大会)である。また、2022年度は前年度に実施できなかったアンタルヤ(トルコ)への海外渡航を実施し、Kemal Turkcan氏(Akdeniz University)との共同研究を実施した。トルコへの渡航には、本課題を基課題とする「国際共同研究加速基金 (国際共同研究強化 (A))」の資金を利用した。トルコで実施した共同研究の成果に基づき、決済方法の決定要因にかかる一編の追加的な論文を執筆した。さらに、決済方法と決済通貨の関係に関する論文の執筆を目下進めている。加えて、日本の中小企業に対するアンケート調査に基づく、輸出経験と決済通貨選択の関係に関する研究論文を、近日Discussion Paperとして出版予定である。 また2022年度には派生的研究テーマとして、財務総合政策研究所との共同研究という形で、日本の税関データを用いた決済通貨および為替パススルーの研究を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、【研究実績の概要】に示した三つの目的それぞれを達成するための作業を並行して進めてきた。第一の目的である「決済通貨の決定に、輸出側と輸入側の間の相対的な交渉力がどういった役割を果たしているのかを明らかにする」ことを達成する点においては、日本の中小企業へのアンケート調査結果を用いた実証分析に基づき、一編の論文を執筆した。当該論文は近日RIETI Discussion Paperとして出版予定である。本研究成果は、日本国際経済学会2022年度春季大会で報告した。 第二の目的である「企業の輸出経験蓄積が、決済通貨選択に与える影響を明らかにする」ことを達成する点でも、上述の出版予定のRIETI Discussion Paperで実証分析を行っている。 第三の目的である「決済通貨選択と、貿易信用などその他の契約事項の選択との相互関係を明らかにする」ことを達成するため、トルコの税関データを用いた実証分析を進めてきた。2022年度はアンタルヤ(トルコ)への渡航を実施し、現地で共同研究を実施した。当該研究成果は二編の論文として整理している。一編(決済方法の決定に関するもの)は既に査読付き国際誌への投稿を進めている。もう一編(決済方法と決済通貨の関係にかかるもの)についても、現状論文を執筆中である。 以上の通り、前年度に想定していた事柄については概ね達成できていることから、概ね順調に進展していると判断した。なお、本研究課題の目的から派生した研究成果である、タイの税関データを用いた地域貿易協定にかかる論文が、Journal of Asian Economicsに受講された。当該論文は2023年度に出版予定である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度の方策としては、まずこれまで執筆した複数の研究論文の査読付き国際誌への投稿を進めていく。掲載に向けて投稿を進めていく。本研究課題の採択時に予定していた研究内容のほとんどは、ここまでの研究期間で概ね論文としてとりまとめることができた。まずはこれらの論文の改訂や学会報告等を進めることで研究成果のアウトリーチを実施し、さらに、査読付き国際誌への出版実現に向けて動いていく。 2022年度は本課題の関連研究として、日本の税関データを用いた決済通貨選択と為替パススルーの研究を、財務総合政策研究所との共同研究という形式で開始した。当該研究テーマでは、税関が保有する取引レベルの貿易データを用いて、企業の特性や製品の特性が、決済通貨選択や為替パススルーにどのような影響を与えるかを検証している。2023年度は当初予定していた本課題の研究テーマの関連論文出版を進めるとともに、当該研究テーマに関しても複数の論文執筆を進めていく予定である。具体的には、日本の公開データではこれまで見ることのできなかった、仕向け国別、品目別の決済通貨がどのような要因によって決定されているのかを先行研究に沿って分析していく。また、国際価値連鎖の広がりを受けて重要性を増した企業内貿易が、決済通貨とどのように関わっているかを分析する。加えて、決済通貨の違いがどのような為替パススルーの違いを生んでいるかについても検証を行う。さらに、企業レベルの為替エクスポージャーの計測といったテーマにも取り組む予定である。2023年度はこれらのテーマに関連する論文も複数執筆を進める。
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