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2023 年度 実績報告書

大学における「深いESD」プログラムの開発と評価に関する実証的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20H01645
配分区分補助金
研究機関上智大学

研究代表者

丸山 英樹  上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (10353377)

研究分担者 永田 佳之  聖心女子大学, 現代教養学部, 教授 (20280513)
米原 あき  東洋大学, 社会学部, 教授 (40633847)
見原 礼子  同志社大学, グローバル地域文化学部, 准教授 (70580786)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードESD / Deep ESD / サステイナビリティ / 変容的学習 / 経験学習 / 学際的アプローチ / システム思考 / スタディツアー
研究実績の概要

本研究は5年で大学におけるESDプログラムの開発と実証的な検証を行う。具体的には、1)すぐに役に立つか否かを問う知識と技能の道具的側面だけではなく、存在論も含めたサステイナビリティの深い問いかけを扱う教育プログラムの開発、2)学際的・経験的・浸透型という実施手法の3アプローチを検証、3)相互に関係する現実の中、小さな変化が大きな変化を生み出すことを把握できるシステム分析とプログラム評価の一部によって、個人と機関の変容を参加型評価で行う。それら目的達成のため文献調査、国内外の訪問調査、プログラム実施のアクション・リサーチを3大学で検証している。
当該年度の研究実績としては、1)開発した教育プログラムを4年にわたり実践し、中でも2)学際的アプローチと経験的アプローチについては実践の蓄積が見られた。特に、1年目に対象とした1年生が3年生となり、開発した両アプローチの実施が確立した。浸透型も進展が見られ、全機関型アプローチとして学内における連携がより見られるようになった。また3)評価は、4回のサイクル(各1年生に事前事後の質問紙調査を行う)ことと2回の長期的変容(1年生時の回答と同じ集団が3年生になった時の回答)を測定し、成果を整理している段階である。
用いる方法のうち、文献調査は着実に進んでおり、研究チーム内での密な共有がより重要となった。当該年度には、ユネスコの最新報告書を公式に翻訳することで、国際動向と日本のESDを接続させた上で、ESDの今後について理解を深めた。フィールドワークは昨年度と同様、コロナ禍下における行動制限がほぼ無くなったことで、再開した。国内外の学会などによる発表も重ねることができ、研究交流も再開された。
残されている課題は、アクション・リサーチとしての変化・変容の追求、最終報告としての知識コモンズの構築とそのプロセスの一部としての広い情報発信である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

国内外における調査も再開され、研究協力者側もデジタルツール等に慣れた形で調査を補完できるようになった。また国際学会や研究会なども頻繁にオンライン参加が可能となり、情報収集が効率的に進んだ。本研究は存在論も扱うため、これまで同様、現地で学ぶことで見られる変容に関する調査が求められる。そのため、フィールドワークは重要であり続ける。
順調である最大の理由は、プロトタイプとしてのプログラムが過去2年で開発でき、それを確実なものとして学際的・横断的に実施することができているためである。しかも、関係者間における共有知識が蓄積されたことから、質保証の議論と検証をより追いかける方向性が支持されているためである。現地訪問を前提とする参加者主導のプログラムの開発は、コロナ禍を経た参加者同士がグローバルな共通認識を前提とできるようになり、訪問できた参加者の積極的な参画が極めてポジティブな動きを生んだ。対面式での経験をオンライン環境で継続させる、特にプログラム終了後でも内発的に持続する関係性が、各自のサステイナビリティ向上へとつながっていることが観察された。これは「オンラインでの学習環境は空間の次元が欠損しがち」という課題を克服するものであった。

今後の研究の推進方策

1)サステイナビリティの深い問いかけを扱う教育プログラムは、学際的・経験的・浸透型アプローチによって今後も運用継続する。パネル調査は困難であると思われるが、4サイクルの実践に参加した学習者に対して経年変化を追いかけることになる。第3サイクルにはシラバスを変更したため、それ以前との比較も行いたい。
2)実施アプローチについては、伝達型・参加型の展開を継続しながら、今後は浸透型・全機関型アプローチがさらに重視される。ただし、全機関型の実態を把握することは時間を要するため、最終年度のみでは把握できないリスクが残る。他方、既に関係者自身が持続可能となるウェルビーイングやケアといった心的側面と時空を扱う制度面での変化については、実践知が蓄積されていることから、教職員に焦点化した研究展開が残っている。これは当初から想定している、組織の変容を捉えることを指す。
3)参加型評価において半年に1回のサイクルに加えて、特に学際的プログラムにおいて最初の卒業生が生まれるタイミングであることから、参加学生の能力(例:サステナビリティ・ コンピテンシー)と生じた変容を把握する予定である。ただし、ESDの成果は先行研究が示すとおり高度に文脈化しているため、ナラティブを重視した整理を心がける。
4)以上のことを総括する形で、国内外の学会発表と出版物の刊行を通した情報共有を進める。挑戦的となるが、最終報告に向けてニューメディアや双方向性のある空間の活用も参加者とともに検討し、実施したいと考えている。

  • 研究成果

    (26件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (7件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (17件) (うち国際学会 3件、 招待講演 8件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] ESD 3.0で2050年の教育と社会を想像する2024

    • 著者名/発表者名
      丸山英樹
    • 雑誌名

      比較教育学研究

      巻: 68 ページ: 138-150

  • [雑誌論文] エストニア『教育戦略2021-2035』の概要と背景(資料)2024

    • 著者名/発表者名
      丸山英樹
    • 雑誌名

      グローバル・コンサーン

      巻: 6 ページ: 59-71

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 協働型プログラム評価によるESDスクール・マネジメント2024

    • 著者名/発表者名
      米原あき
    • 雑誌名

      評価クオータリー

      巻: 68 ページ: 3-19

  • [雑誌論文] 自然物とその影を描写する CONNECTEDkind 体験者の脳波分析2024

    • 著者名/発表者名
      永田佳之、山下恭平ほか
    • 雑誌名

      美術教育学

      巻: 45 ページ: -

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] ESDの深い次元:公教育の「これまで通り」から構成される学習へ2023

    • 著者名/発表者名
      丸山英樹
    • 雑誌名

      教育学年報

      巻: 14 ページ: 81-101

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The influence of the whole school approach on implementing education for sustainable development in Japan2023

    • 著者名/発表者名
      Sasaki Orie、Yonehara Aki、Kitamura Yuto
    • 雑誌名

      PROSPECTS

      巻: OA ページ: -

    • DOI

      10.1007/s11125-023-09667-4

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] "Potentials and mechanisms of Translocal Learning for ESD: Through the action research of ACCU’s India-Japan Teacher Exchange Program"2023

    • 著者名/発表者名
      Yonehara, A. and Arora, V.
    • 雑誌名

      東洋大学社会学部紀要

      巻: 61(1) ページ: 77-96

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [学会発表] 自然物とその影を描写する CONNECTEDkind 体験者の脳波分析2024

    • 著者名/発表者名
      永田佳之、水島尚喜、野島雅
    • 学会等名
      美術科教育学会
  • [学会発表] 持続可能な未来と教:SDGs のその先へのリイマジネーション2024

    • 著者名/発表者名
      永田佳之
    • 学会等名
      グローバル人材育成教育学会
    • 招待講演
  • [学会発表] 2050年の教育と社会に向けて、何を続け・やめ・つくりなおすか2024

    • 著者名/発表者名
      丸山英樹
    • 学会等名
      日本教育政策学会課題研究2024年3月公開研究会「変容する公教育とグローバル教育ガバナンス」(招待講演)
    • 招待講演
  • [学会発表] The Role of Non-formal Education in Enhancing Sustainability2023

    • 著者名/発表者名
      Maruyama, H.
    • 学会等名
      国際開発学会第24回春季大会プレナリーセッション(招待講演)
    • 招待講演
  • [学会発表] 他者を通して自分の強みを知る研究資質(国際共同研究に調整したい人のたためのABC:ネットワーク形成から実践まで(ラウンドテーブル))2023

    • 著者名/発表者名
      丸山英樹
    • 学会等名
      日本比較教育学会第59回大会
  • [学会発表] 日印教員交流プログラムにおける「通域的な学び translocal learning 」の成果とメカニズム:「借用」から「協創 co-production」への転換可能性2023

    • 著者名/発表者名
      米原あき
    • 学会等名
      日本比較教育学会第59回大会
  • [学会発表] 「持続可能な開発」を評価するとはどういうことなのか不確実性・多様性・動態性における価値協創のための評価に関する理論考察2023

    • 著者名/発表者名
      米原あき
    • 学会等名
      国際開発学会
  • [学会発表] Social and Emotional Learning for Peace What Did University Students Learn from Children‘s Paintings from Ukraine and Russia2023

    • 著者名/発表者名
      Yoshiyuki Nagata
    • 学会等名
      The 24th Conference of the Korean Society for International Understanding Education
    • 国際学会
  • [学会発表] アートは〈平和の文化〉に貢献できるのか:ウクライナ及びロシアの子ども絵画を鑑賞した大学生アンケートの分析と課題2023

    • 著者名/発表者名
      永田佳之、安藤穂乃佳
    • 学会等名
      日本国際理解教育学会
  • [学会発表] 1974年国際教育勧告を捉え直す-ユネスコ本部及び文部科学省の資料分析から-2023

    • 著者名/発表者名
      永田佳之、阿部裕子、大山正博
    • 学会等名
      日本国際理解教育学会
  • [学会発表] 気候変動の時代の幼児教育: UNESCO報告書『私たちの未来を 共に再想像する』を受けて2023

    • 著者名/発表者名
      永田佳之
    • 学会等名
      日本学術会議心理学・教育学委員会「保育・幼児教育の公共性」公開シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 深いESDで サステイナブルな未来をつくる(公開シンポ:持続可能な未来に向けた「学びの共同体」)2023

    • 著者名/発表者名
      丸山英樹
    • 学会等名
      日本比較教育学会第59回大会(招待講演)
    • 招待講演
  • [学会発表] 第5章 エストニアへのスタディツアーからみる深いESDの実践と理論2023

    • 著者名/発表者名
      丸山英樹
    • 学会等名
      日本比較教育学会第59回大会(招待講演)
    • 招待講演
  • [学会発表] 「2050年の教育と社会」ワークにみる「深いESD」2023

    • 著者名/発表者名
      丸山英樹
    • 学会等名
      日本国際理解教育学会第32回研究大会
  • [学会発表] Non-formal Education for Sustainable Futures A deep perspective from a rapid-aging society2023

    • 著者名/発表者名
      Maruyama, H.
    • 学会等名
      The Sixth International Conference on Adult Education (CIEA) (Moldova State U)(招待講演)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Social Ecology Approach in Education for Sustainable Futures: Three questions for the year 20502023

    • 著者名/発表者名
      Maruyama, H.
    • 学会等名
      13th Biennial Conference of the Comparative Education Society of Asia (CESA 2023)
  • [学会発表] Exploration and Emergence: Deepening Imagination through Storytelling and Non-Formal Education2023

    • 著者名/発表者名
      Maruyama, H.
    • 学会等名
      The art of storytelling, interactive method in the Art of education. Good practices in non-formal activities (West University of Timisoara, Romania))(招待講演)
    • 国際学会 / 招待講演
  • [図書] Steiner Education in Japan: Its Development and Potential' In: Critically Assessing the Reputation of Waldorf Education in Academia and the Public: Recent Developments the World Over, 1987-20042024

    • 著者名/発表者名
      Y. Nagata, A. Yoshida
    • 総ページ数
      222
    • 出版者
      Routledge
  • [図書] サステナビリティ変革への加速(国際基督教大学SSRI・上智大学IGC第42回シンポジウム)(分担執筆:持続可能な未来に向けて教育を変容させる)2023

    • 著者名/発表者名
      丸山英樹
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      東信堂

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公開日: 2024-12-25  

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