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2022 年度 実績報告書

代数的サイクルの数論幾何学的研究

研究課題

研究課題/領域番号 20H01791
配分区分補助金
研究機関東京大学

研究代表者

齋藤 秀司  東京大学, 大学院数理科学研究科, 名誉教授 (50153804)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワードモチーフ理論 / 相互層
研究実績の概要

モチーフの理論は数論幾何学,代数幾何学における重要な研究対象である.これに大きな進展をもたらしたVoevodskyのモチーフ理論はアフィン直線にたいするホモトピー不変性が理論の前提になっている.しかし代数幾何学の様々な基本的な不変量(例えば微分形式の層のコホモロジー)はホモトピー不変性を満たさない.当該研究では,Voevodskyのモチーフ理論を拡張し,ホモトピー不変でない不変量をも包括する新たなモチーフの理論を構築するためにVoevodskyの理論で中核的役割をはたす「ホモトピー不変性層」を拡張する「相互層」を新たに導入した.一方, Voevodskyの理論を拡張する別のアプローチとして,Binda, Park, Ostvaerによる対数的モチーフの三角圏 lDM の構築がある.本年度の成果は,相互層のNisnevichコホモロジーが対数的モチーフの三角圏lDMにおいて表現可能であることを示し,相互層の理論と対数的モチーフ理論の関係を明らかにしたことである.これを詳しく説明する.
lSmを体k上有限型な対数的に滑らかな対数的スキームの圏とし,Shv(lSm)をlSm上のtransfer構造を持つNisnevich層のなす圏とする.BindaとMerici はlDM上に自然なt-構造を定義し,そのheartがShv(lSm)のある充満部分圏lCIに一致することを証明した.本年度の成果は以下の定理である.RSCを相互層のなす圏とするとき充満忠実な完全関手 Log : RSC → lCI が存在する.さらに相互層Fとk上の滑らかなスキームXにたいし同型
H^i_{Nis} (X,F) = Hom_(lDM ) (M(X,triv),Log(F)[i]) が成立する.ここで左辺はXのNisnevichkホモロジーで,(X,triv)はXに自明な対数構造を与えた対数スキームである.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

数論幾何学,代数幾何学における重要な研究対象であるモチーフの理論に大きな進展をもたらしたVoevodskyのモチーフ理論を拡張する二つの理論,相互層の理論および対数的モチーフの理論の関係を明らかにした.具体的には,相互層のなす圏から対数的モチーフの三角圏 への自然な関手を定義し,それを用いて相互層のNisnevichコホモロジーが対数的モチーフの三角圏において表現可能であることを示した.

今後の研究の推進方策

Voevodskyのモチーフ理論を精密化するモジュラス付きモチーフ理論を構築する.その中心的なアイデアは,滑らかな多様体をモジュラス対に置き換えVoevodskyのモチーフ理論を再構成することである.ここでモジュラス対とは,スキームXとX上の有効カルティエ因子Dとの対(X,D)でX-Dが滑らかであるようなものである.さらにホモトピー不変性の代替として,キューブ不変性を用いる.ここでキューブとは射影直線と無限遠点の対である.滑らかな多様体にたいする相互層Fは,適切な''分岐フィルトレーション''を与えることにより,モジュラス対にたいするキューブ不変層に拡張される.さらに,相互層のコホモロジーにたいして示した純粋性定理,射影束公式と滑らかなブローアップ公式およびGysin系列の存在定理はキューブ不変層のコホモロジーに格上げすることが期待される.さらに,キューブ不変層のNisnevichコホモロジーが,Kahn-Miyazaki-Saito-Yamazakiが導入したモジュラス付きモチーフの三角圏において表現可能であることを示すことが目標である.これはVoevodskyが示した「ホモトピー不変層のNisnevichコホモロジーが,Voevodskyが導入したモチーフの三角圏において表現可能である」という事実の一般化である.

  • 研究成果

    (9件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] University of Milano(イタリア)

    • 国名
      イタリア
    • 外国機関名
      University of Milano
  • [雑誌論文] On the cohomology of reciprocity sheaves2022

    • 著者名/発表者名
      Federico Binda, Kay R"ulling Kay, Shuji Saito
    • 雑誌名

      Forum Math. Sigma

      巻: 10 ページ: 111 page

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Motives with modulus, III: The categories of motives2022

    • 著者名/発表者名
      Bruno Kahn, Hiroyasu Miyazaki, Shuji Saito, Takao Yamazaki
    • 雑誌名

      Ann. K-Theory

      巻: 7 ページ: 119--178

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Reciprocity sheaves, II2022

    • 著者名/発表者名
      Bruno Kahn, Shuji Saito, Takao Yamazaki
    • 雑誌名

      Homology Homotopy Appl.

      巻: 24 ページ: 71--91

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Correction to the article Lefschetz theorem for abelian fundamental group with modulus2022

    • 著者名/発表者名
      Moritz Kerz, Shuji Saito
    • 雑誌名

      Algebra and Number Theory

      巻: 16 ページ: 2001-2003

    • 査読あり / 国際共著
  • [学会発表] From higher dimensional class field theory to a new theory of motives2023

    • 著者名/発表者名
      斎藤秀司
    • 学会等名
      東大数理大談話会
    • 招待講演
  • [学会発表] Generalized Weibel conjecture2023

    • 著者名/発表者名
      Shuji Saito
    • 学会等名
      Seminario di Geometria Aritmetica
    • 招待講演
  • [備考] Shuji Saito Webpage

    • URL

      https://www.lcv.ne.jp/~smaki/ja/index.html

  • [学会・シンポジウム開催] Motives in Tokyo, 20232023

URL: 

公開日: 2024-12-25  

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