研究課題/領域番号 |
20H01797
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
大川 新之介 大阪大学, 理学研究科, 准教授 (60646909)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 導来圏 / 非可換代数幾何学 |
研究実績の概要 |
非可換代数幾何学に関する諸研究を行った。まず、非可換del Pezzo曲面論の基礎づけに関する成果として、植田一石氏との共著でプレプリントarXiv:2007.07620を発表した。AS正則Z代数と可換代数幾何学的データとの1対1対応を確立することがこの分野の1つの目的であるが、このプレプリントでは可換代数幾何学的データから始めてAS正則代数を構成する向きについての一般的な手法を確立した。これはBondal-PolishchukやVan den Berghの先行研究の一部を概念的な議論に置き換えたものであり、ある種の一般化である。 次に、弱del Pezzo曲面上の例外対象列の構造に関する研究を行った。その成果を、石井亮・上原北斗両氏との共著プレプリントarXiv:2107.03051として発表した。Del Pezzo曲面の場合にはKuleshov-Orlovによって四半世紀前に確立された結果があるが、導来圏が球面捻りと呼ばれる非自明な対称性を持つという事情があるために、それを弱del Pezzoへ拡張することは非自明であった。我々はKuleshov-Orlovの結果が弱del Pezzo曲面の場合にどのように一般化されるべきであるか、という事について一般的な予想を確立することに成功し、それを最も基本的な場合である2次Hirzebruch曲面の場合に完全解決することに成功した。この研究の副産物として、非可換del Pezzo曲面とAffine Weyl群の拡大との関係に関する興味深い事実を発見することもできた(準備中)。 さらに、まだ準備中であるが、極小一般型代数曲面の導来圏の半直交分解の研究やある種の非可換3次元射影空間とその3次曲面の研究にも進展があった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非可換del Pezzo曲面の研究に関するプレプリントarXiv:2007.07620は、非可換del Pezzo曲面論の基礎づけの中心的な話題であるAS正則Z代数と可換代数幾何学的データとの1対1対応の確立へ向けた研究のうちの「片側のimplication」を一般的な形で確立したものであり、着実な進歩であると言える。また、プレプリントarXiv:2107.03051の成果は10年近く前からの研究が結実したものであり、弱del Pezzo曲面上の例外対象列の構造に関する一般的な見通しを明確な予想として与え、それを基本的な例において確認した画期的な結果であったと言える。上原北斗氏との先行研究(2015,IMRN)からの大変大きな進展であった。また、この結果は非可換del Pezzo曲面の研究とも意外な形で繋がった(プレプリント準備中)。その内容は、一言で述べるならば、「同じ非可換del Pezzo曲面を定めるが同型でないAS正則Z代数同士を結びつける群作用の起源は弱del Pezzo曲面の導来圏の圏同値であった」ということになる。 このように、非可換代数幾何学に関する諸課題の研究を着実に進め、またその成果をプレプリントの形にまとめることができたので、現在までの研究は順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
上述のように、同じ非可換del Pezzo曲面を定めるが同型でないAS正則Z代数同士の関係を理解するという課題があるが、非可換2次曲面の場合にはこれが完全解決しており、また、2次Hirzebruch曲面の導来圏の圏同値との関係も理解できている。まずはこれに関するプレプリントを完成させて発表したい。 また、導来圏の半直交分解と標準線形系との関係についても、進展があった。これについてもプレプリントを完成させて発表したい。 さらに、最近になって、タイプR(1,3)型と呼ばれる非可換3次元射影空間とその3次超曲面の研究にも進展があった。この研究を進めると共に、AS正則Z代数から定義される非可換3次曲面との関係についても研究を進めたい。
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