研究課題/領域番号 |
20H01810
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 城西大学 |
研究代表者 |
原岡 喜重 城西大学, 数理・データサイエンスセンター, 特任教授 (30208665)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | KZ型方程式 / middle convolution / Lappo-Danilevsky理論 / シフト作用素 |
研究実績の概要 |
多変数完全積分可能系のmoduli空間には様々な操作が定義される。特にKZ型方程式に限ると,いくつかの操作の間の関係が明確に記述される。そこでKZ型完全積分可能系のmoduli空間を相空間とし,変数変換,middle convolution,制限・延長,合流・unfoldingなどの操作を写像とする力学系を考えるという着想を得て,この視点からmoduli空間の研究を進めた。KZ型方程式については,可換な留数行列の組に対する同時固有空間分解がスペクトル型に相当するので,様々な写像(操作)による同時固有空間分解の変化を記述すること,rigidityの変化を記述することなど,いくつかの基本的問題が明確化された。特にいくつかの写像(操作)を組み合わせることで,アクセサリー・パラメーターを持つような完全積分可能系をいくらでも作ることができる,という新しい発見があった。 Fuchs型常微分方程式のシフト作用素についての研究も進めた。計算機実験で具体例を調べ,任意の整数シフトに対するシフト作用素が存在するか,という問題を設定するに至った。これはRiemannの問題の精密化ととらえられる。Lappo-Danilevskyの理論を研究し,そこに現れる指数行列の概念が有用であり,シフト作用素の存在問題に適用できることに気づいた。問題解決にはまだ至っていないが,解決への有望な道筋が発見できたものと考える。 国際研究集会への参加・成果発表を行い,国内外の研究者との研究交流を進めた。最新の研究成果や,古典的な結果についての新しい知見を,多く得ることができた。若手研究者と定期的にセミナーを行い,研究成果や問題の認識の仕方などを交換することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
力学系の視点からmoduli空間をとらえるという着想により,研究の新しい方向性が得られた。また同時に,多くの興味深い例を系統的に構成する方法を手に入れることもできた。 シフト作用素の存在問題に取り組み始め,興味深い実験結果が得られたため,その解析に取り組むとともに,背後にある理論の追求というテーマが現れてきた。 国内外の研究者との研究交流を進めることができ,視野・知見を広げることができた。
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今後の研究の推進方策 |
KZ型方程式のmoduli空間のなす力学系において,軌道の記述,不変量の構成など,基本的問題に取り組み,moduli空間の解析を進めていく。 シフト作用素の存在問題について,計算機実験を進めていく。またRiemann-Hilbert問題など関連する研究を調べ,存在問題の解決の道筋を追求する。 研究集会への参加・成果発表などを通して,国内外の研究者との交流を進め,最新の知見を取り入れ,研究テーマの具体化を図る。
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