研究課題/領域番号 |
20H01814
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
溝口 紀子 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (00251570)
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研究分担者 |
中西 賢次 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (40322200)
高田 了 東京大学, 大学院数理科学研究科, 准教授 (50713236)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 走化性方程式系 / 爆発 |
研究実績の概要 |
数年前にRaphael-Schweyerは彼らの証明が数学的な厳密性を欠くこと指摘し、Herrero- Velazquezとは異なる方法で特別な球対称解を厳密に構成した。さらに、Collot-Ghoul-Masmoudi-NguyenはRaphael-Schweyerの球対称な特別解の爆発速度の係数まで特定して特別な球対称解の構成を完成させた。研究代表者は、特別解以外の解の爆発について、球対称な場合は爆発するすべての解は特別解と同様の漸近挙動を取ることを証明して球対称な場合の爆発解の挙動を完全に解明した。また、放物型-放物型の走化性方程式系において、球対称な時間大域解が時刻無限大で原点以外の場所では定常解に収束することを証明した。放物型-放物型走化性方程式系では球対称な爆発解の存在が知られているだけで、どのような条件のもとで爆発が起こるのかは不明であったが、この結果を応用することによって、空間次元が2,3,4の場合に、解が有限時間で爆発するための十分条件を得た。さらに、境界の有無に関わらず解の爆発がタイプIIであることを証明し、領域が全平面の場合に、球対称解が有限時間で爆発するための十分条件を証明し、境界条件がある場合とは異なることを示した。 研究分担者の中西賢次氏は、空間1次元の長距離型非線形Schrodinger方程式の解の時間大域挙動について調べ、一般の時空依存ポテンシャルと非分散性波動成分の介在の下でも、分散波動成分の挙動は自由方程式とは異なることを示した。空間2次元のエネルギー臨界熱方程式の初期値問題について調べ、解の非一意性を示した。 研究分担者の高田了氏は、重み付き高階 Gagliardo-Nirenberg 型補間不等式を考察し、不等式の成立に関する重み冪の許容指数範囲が、球対称関数に対してはより広い範囲へ改良されることを証明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
コロナの感染拡大の影響により、海外への渡航や海外から日本への入国が制限され、研究代表者と分担者の海外出張、および海外からの研究者の招聘が不可能になり当初の計画方法に従って研究を進めることはできなかった。しかしながら、研究代表者、分担者ともに、個人の研究に注力することによって、当初目指していた結果はおおむね達成することができた。 当初計画していた、研究代表者は放物型-楕円型走化性方程式系の球対称な解が有限時間で爆発するときの速度と爆発点の近くでの漸近挙動がただ一つである、すなわち、すでに構成されていた特別解の挙動と同じであることを証明した。これによって、放物型-楕円型走化性方程式系の球対称な爆発解の挙動の研究は完成された。また、放物型-放物型走化性方程式系の球対称性をもつ時間大域解の空間次元に依存しない性質を発見して証明し、それを応用することによって、球対称解が有限時間で爆発するための十分条件を得た。解の延長については現在も研究を継続中である。全体的にみて、おおむね順調に進展していると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
ペトリ皿で培養中のバクテリアが集中現象を起こす様子をKellerとSegelが記述した数学モデルが放物型-放物型走化性方程式系(Keller-Segel系とも呼ばれる)である。バクテリアの集中現象は数学的には方程式系の解の有限時間での爆発と定義される。この爆発はタイプIIの爆発であることが分かっている。非線形偏微分方程式では、非線形項の形が異なる場合や、非線形項の形は同じで方程式の型が異なる場合にもタイプIIの爆発が起こることが報告されている。一般的に、タイプIの爆発よりタイプIIの爆発の方が複雑なので数学的な扱いが難しい。放物型-放物型走化性方程式系だけでなく視野を広げて他の方程式における理論や手法も取り込むことによって本研究の進展を図る。本研究では、意図的に異なる方程式の研究者を研究分担者として研究組織を構成しているが、研究組織内での共同研究だけでなく、結果の予測やモデルのシミュレーションが必要になれば数値解析の専門家にも協力してもらう。
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