研究実績の概要 |
高温プラズマ中における固体水素の溶発過程と,溶発した水素がプラズマ中に均質化してゆく過程を,高空間分解能イメージング分光計測と高時間分解能スペクトル計測を組み合わせた新しい計測手法で調べ,プラズマへの粒子供給素過程を明らかにすることが,本研究の目的である. 2020年度は,分光器のセンサ部を通常のCCD素子ではなく,高速PINフォトダイオードアレイを用いて,格段に応答速度が速い高時間分解能スペクトル計測装置の開発を行った.高速計測のため,チャンネル数が限られるが,計測対象である固体水素の溶発現象では,水素の発光が支配的であることを利用し,水素のバルマー系列のスペクトル(Hα, Hβ, Hγ)と575 nm付近の連続光のスペクトルから,可視光スペクトル全体を推定する.各スペクトルあたり32チャンネルの高速フォトダイオードアレイからの信号を増幅する128チャンネルの増幅回路の設計と製作を行なった. 分光器の較正とLHDにおけるペレット入射実験に関しては,CEA/IRFMの研究協力者を招聘して共同で実施し,固体水素の溶発発光を利用して高時間分解能スペクトル計測の性能確認を行う予定であったが,COVID-19に起因する世界的な渡航制限のため招聘が実施できなかった. 高時間分解能スペクトル計測装置の試運用を開始し,LHD実験キャンペーンにおいてペレット入射実験を行い,固体水素溶発発光を実際に観測し,センサの性能を確認する基礎的な試験を行った.その結果,1 MHzの時間分解能で溶発発光を計測できることを確認した.一方で,予測よりもノイズが大きいため,強度の弱いスペクトルの計測精度が十分に出せないことが明らかになったため,高速アンプの改良を行った.また,高速カメラを用いた高空間分解能イメージング分光計測装置の整備のため,カメラ保持台や真空窓の準備を行った.
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