研究課題/領域番号 |
20H01894
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高橋 史宜 東北大学, 理学研究科, 教授 (60503878)
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研究分担者 |
石渡 弘治 金沢大学, 数物科学系, 准教授 (40754271)
北嶋 直弥 東北大学, 学際科学フロンティア研究所, 助教 (50737955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 極弱粒子 / 初期宇宙 |
研究実績の概要 |
石渡は絶縁体中素励起としての準粒子アクシオンおよび初期宇宙におけるアクシオンに着目し、前者では磁性と準粒子アクシオンの関係を明瞭に定式化、後者ではアクシオンと非可換ゲージ場の相互作用から発生する原始重力波スペクトルを明らかにした。桜井はアクシオンと電弱スケールの新物理とのつながりを追求することを念頭に、ヒッグスセクターが拡張された模型において、荷電ヒッグスボソンの崩壊分岐比に対する輻射補正の効果を解析した。この研究により将来的に荷電ヒッグスボソンが発見された場合、崩壊分岐比を精密測定することで、拡張ヒッグス模型の識別が可能であることを明かにした。また、125GeVヒッグスボソンのインビジブル崩壊の量子補正を解析し、電弱スケールの新粒子による量子効果の影響が、現在のLHC実験の測定精度に匹敵し得ることを明らかにした。北嶋は,極弱粒子の代表例であるQCDアクシオンがダークマターとなるシナリオにおいて、背景時空および、背景輻射の断熱揺らぎの影響を考慮した解析を行い、QCDアクシオンの密度揺らぎの発展について非自明な効果を指摘した。高橋は宇宙複屈折を説明するシナリオとしてダークマターと結合した軽いアクシオンの運動を提唱した。これによって、宇宙複屈折の時期が自然にmatter-radiation equalityの時期に近いことが説明することができた。またQCDアクシオンの運動がPeccei-Quinn対称性の破れが存在する場合にどのように変化する場合を解析的および数値的に明らかにした。特に、崩壊定数が非常に小さい場合であっても、適当な破れを導入することによって、等曲率ゆらぎを抑えつつダークマターを説明することができるということを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
アクシオンダークマター探索実験が世界中で活発に行われる中、絶縁体中素励起としての準粒子アクシオンの質量スペクトラムと磁性との間の関係を明らかにするという理論的な定式化を行ったことは、将来実験において非常に重要であると考えられる。また、多くのアクシオン探索実験でターゲットとしている比較的重い(~meV)程度のアクシオンに対し、それがダークマター存在量を説明することができるような新たなシナリオを提唱することができた。
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今後の研究の推進方策 |
石渡は前年度の研究で整えた絶縁体中の準粒子アクシオンの定式化を、より一般的かつ汎用性の高い形式へと拡張する。それを応用し、ダークマターとしてのアクシオン検出のための現実的な探索方法の提示を目指す。桜井はXENON1T実験で報告された電子反跳現象の超過を説明可能なアノマリーを持たないアクシオンを含んだ繰り込み可能な新物理模型を構築する。この模型で予言されるTeVスケールの新粒子とアクシオンの関係性を調べる。アクシオンの質量の起源となる大局的対称性の破れの効果がアクシオンの相互作用にどのような影響を与えるかを、アクシオンを予言する様々な新物理模型について調べる。高橋は最近CDFII実験によって報告のあった従来よりも重いWボソン質量を実現するようなヒッグス三重項を導入する新物理模型において,アクシオンダークマターを埋め込む可能性や初期宇宙進化への影響を探る。北嶋は,断熱揺らぎの効果を考慮したQCDアクシオンの密度揺らぎに発展について、非線形性を取り入れるための格子シミュレーションを行い、オシロン形成が起こるかどうか、およびどの程度の寿命を持つかなどを定量的に評価する。
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