研究課題/領域番号 |
20H01919
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
音野 瑛俊 九州大学, 先端素粒子物理研究センター, 助教 (20648034)
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研究分担者 |
有賀 智子 九州大学, 基幹教育院, 准教授 (00802208)
田窪 洋介 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50423124)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | FASER / LHC衝突点前方 / ニュートリノ / シリコン検出器 |
研究実績の概要 |
FASER実験はLHCのビーム衝突点の480m前方にFASER検出器を設置し、未知粒子の探索と高エネルギーニュートリノの測定を目指している。本研究では未知粒子探索のための検出器(シリコン飛跡検出器、ダイポール磁石、シンチレーター、カロリメータ)と高エネルギーニュートリノ測定のための検出器(タングステン板とエマルションフィルム、シンチレーター)の間に新たにインターフェース検出器を追加することで、全ての検出器を統合した物理解析を目的としている。
2022年6月に開始したLHCの第3期運転において、インターフェース検出期を含む全検出器を稼働させた。検出器の性能をモニターするソフトウェアの充実化などを通じて検出器運転の堅牢化に努め、2022年11月までのビームタイムにおいて安定したデータ取得を実現した。インターフェース検出器の他の検出器に対する相対位置の精度の良い決定(アラインメント)が、全ての検出器を統合した物理解析には必須となる。アラインメントのアルゴリズムをLHCのビーム衝突点で生成するミューオンを用いて開発した。
そしてインターフェース検出器を含む未知粒子探索のための検出器が取得したデータを解析することで、2023年3月の国際会議においてダークフォトンと呼ばれる新粒子に対する未開拓領域での探索(残念ながら新粒子発見には至らず)と、LHCが生成するニュートリノの初観測を報告した。未知粒子探索のために開発した検出器によるニュートリノの初観測は当初想定していなかった成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していたLHC第3期運転におけるデータ取得を実現し、インターフェース検出器を含む全検出器が安定して稼働している。新粒子探索とニュートリノ研究の双方で既に物理成果を得るに至った。全ての検出器を統合した物理解析に向けたアラインメントも順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
アラインメントのためのアルゴリズムを改善することで、インターフェース検出器のアラインメントを完了させる。インターフェース検出器の支持構造は他の検出器と独立しているため、理想的な設置位置から1mm程度ずれていると考えられる。アルゴリズムの初期値設定の最適化に取り組む。LHCは2023年の運転を4月から11月まで予定している。FASER検出器の安定したデータ取得を実現する。2022年に取得したデータと合算し、解析をさらに高度化することで、新粒子探索とニュートリノ研究を進展させる。
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