研究課題/領域番号 |
20H01942
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
新納 悠 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (50632163)
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研究分担者 |
新沼 浩太郎 山口大学, 大学院創成科学研究科, 教授 (30434260)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 高速電波バースト / 多波長天文学 / 時間領域天文学 |
研究実績の概要 |
高速電波バースト(FRB)は正体の全く分かっていない新種の突発天体であり、約1 GHzの周波数帯の電波で数ミリ秒間という非常に短い継続時間に数Jy程度のフラックスをもつ。起源のわからない突発天体の正体を解明するには他波長の対応天体を発見することが重要な手がかりになるが、これまでにFRBの可視光対応天体は見つかっていない。FRBは短い時間スケールの現象であるため他波長の対応天体も同様に短い時間スケールを持つ可能性があり、その探査には各波長の観測装置に広い視野と短い時間分解能が必要とされる。本研究では、20平方度の広視野と秒スケール以下の時間分解能を持つ希有な装置である木曽シュミット望遠鏡のTomo-e Gozenを用いて電波望遠鏡との同時観測を行うことにより、FRBの可視光対応天体を探査する。 2020年度は広視野電波観測装置 Canadian Hydrogen Intensity Mapping Experiment (CHIME) のFRB観測グループと共同でのFRB観測に関する協議をすすめ、共同観測の体制を築いた。また、子午線方向に固定された視野を持ち地球の時点と共に掃天観測を行う CHIME と同時観測を行うための木曽シュミット望遠鏡の制御方法を検討した。 また、中国の大型電波望遠鏡 Five-hundred-meter Aperture Spherical radio Telescope (FAST) のFRB観測グループとも共同研究の可能性を協議し、試験観測を行なった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
世界最高のFRB探査能力を持つ広視野電波観測装置 CHIME のFRB観測グループとの共同観測に関する協議がまとまり、2021年3月には共同観測を実際に開始することができた。3月に行なった約6時間の共同観測中にFRBイベントの発生はなかったが、観測データの取得は大きな問題なくおこなえており、FRB発生の際には十分な可視光対応天体探査能力を発揮できるものと期待できる。 また、FASTのFRB観測グループとの協議も順調に進み、repeating FRB の監視や可視電波同時掃天等の観測を試験的に行なった。 新型コロナウイルス感染症の影響下で木曽観測所の体制整備の一部を2021年度に繰り越す必要に迫られたが、既存設備を一時的に活用することで観測の進展への影響を防ぐことができた。
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今後の研究の推進方策 |
広い視野をもつ Tomo-e Gozen と CHIME による共同観測であっても重複視野内での FRB 発見には200-300時間程度の観測が必要と考えられ、今後着実に共同観測を積み重ねることが重要である。また、FRB 発見の際に CHIME グループとの情報共有や可視光対応天体探査を迅速に行うため、体制の整備とソフトウェアの改善を観測の実施と並行して進める。
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