研究課題
近年大きな発展がみられる時間軸天文学の中にあって、熱赤外線は未開拓の波長帯であり、そのモニタ体制は世界的にみても未整備である。本研究では、このモニタ観測を実現するうえで技術的課題であった感度校正を実現するユニットを開発している。これまでの研究により、黒体炉とレンズからなる校正ユニットを開発し、実験室による性能確認試験を完了した。結果、モニタ観測の目標である1%を大きく下回る精度での感度校正が可能であることを実験的に示すことに成功した。これは、これまでの地上中間赤外線観測装置で行われてきた感度校正に比べ、数倍以上良い精度であり、観測環境や大気条件に左右されず校正が行えることも含め、画期的な内容である。開発成果は国際光工学会の国際研究会で発表されたほか、査読論文にもまとめられている(現在投稿中)。校正ユニットを中間赤外線観測装置上面に取り付けるための光学機械系の開発も完了している。モニタリング観測は1年以上のタイムスケールで実施されるので、校正ユニットも長期にわたる安定性が必要となる。このような長期安定性の試験を今後続ける。観測装置を搭載するTAO望遠鏡の建設の進捗状況にもよるが、2023年度後半にはチリに輸送し、実際の天体観測へ適用をはじめ、研究テーマである太陽系外惑星形成時のジャイアントインパクトや太陽系内天体の観測をスタートさせる。
2: おおむね順調に進展している
本研究で実施している中間赤外線モニタ観測用の校正ユニットについては順調に開発が進み、予想を上回る性能を達成しつつある。その点では研究は順調であるが、観測を行うTAO望遠鏡の建設が新型コロナウイルス蔓延やその後の世界的物品不足を受けてやや遅延気味であり、そのため開発した校正ユニットを含む観測装置のチリ輸送・望遠鏡搭載が遅れ気味である。その間も実験室で長期安定性の試験を行うなど、性能の確認向上に有効利用する計画ではあるが、全体の評価としては「おおむね順調」としたい。
昨年度までの開発で中間赤外線モニタ観測用の校正ユニットは完成、実装を終えている。今後はまずこの校正ユニットの実験室内での試験を進める。特に校正ユニットの長期安定性や季節変動の有無は、長期モニタ観測を進めるうえではカギとなる要素なので、実験的な検証を進める必要がある。装置を搭載するTAO望遠鏡は2023年度内の観測開始を目指しており、準備が整い次第、校正ユニットを含む観測装置はチリへ輸送する。現在の計画では出荷が2023年の9-11月ごろになる見込みである。輸送後は再組立て調整を実施し、できるだけ早い段階での観測を目指す。遅くとも2024年度内には科学観測をスタートできる見込みである。
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Proceedings of the SPIE
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