研究課題
チリ・アタカマ砂漠に設置された国立天文台ASTE望遠鏡による中性炭素原子ガス(CI)観測のための装置の開発を行なった。具体的には、国立天文台の共同研究者と協力し、中間周波数系の信号を周波数帯域で分割するスィッチとフィルターを開発、分光計に導いて複数の周波数帯のスペクトルを同時に受信できるようにした。性能評価を行いチリに搬出、天文台の研究者によって望遠鏡に搭載された。同時に搭載された広帯域分光計とともに使用することで、CI 1-0輝線とCO 4-3輝線が同時に観測可能となり、観測効率の向上が期待できる。一方でNANTEN2望遠鏡では、CO輝線のデータ解析用ソフトウェアの開発を行なった。NASCOマルチビーム受信機特有のビームの回転補正を行い、天球面上で再合成することで、シャープな画像を得ることができるようになった。また望遠鏡駆動のためのソフトウェアも改善し、効率と自由度を向上させた。これにより、観測時間の短縮が期待される。またビームスクイントやビーム能率の測定手法を確立した。さらにALMA望遠鏡で取得されたCIおよびCOのデータを解析し、星間ガスの微細な構造を検出、原子・分子それぞれの相にあるガスの物理量の推定などを行なった。その結果、数1000 AUスケールの原子ガス相の中に、数100 AUスケールの小分子雲が埋もれ、それらがランダムに運動していることが確認された。それらのが圧力平衡状態にあると考えると、密度と温度はファクター3程度異なっていることが推定された。
3: やや遅れている
新型コロナウィルスの影響は深刻で、2020年3月から海外渡航ができなくなり、チリ・アタカマ砂漠にあるNANTEN2望遠鏡は休止状態となっている。大学における装置開発は進めたが、国立天文台の共同研究者と議論し、NANTEN2ではCO輝線の観測データの取得に注力し、CI輝線データは、高い周波数の受信機搭載で先行しているASTE望遠鏡を積極的に利用することが、本研究課題の達成には近道であると判断した。そのため上記のように、装置開発をASTE望遠鏡のシステムに適応させた。一方でNANTEN2望遠鏡はCOの1-0, 2-1輝線の観測に特化し、効率的な観測が実現できるようなソフトウェアを開発した。状況が改善し、海外渡航に支障がなくなれば、すぐにでも観測を開始できる状況で、2022年度後半を目処に準備を進めている。
チリにおける活動について、国立天文台の現地職員とも情報を交換し、状況を確認しており、改善の兆しは見えている。再開に向けて準備は進めている。観測開始が遅れてしまうことに対応するため、予算は2023年度に集中的に投入し、観測時間を確保することを計画している。また観測輝線によって、ASTEとNANTEN2の2つの望遠鏡に役割を割り振ったことで、データ取得の効率もあげられると考えている。ASTEについては、上記の開発が終了し、また広帯域の分光計の搭載も進んだため、CI 1-0輝線に加え、CO 4-3輝線の同時観測も可能となった。また同時観測はできないが、受信機を切り替えることにより、CI 2-1輝線の観測も可能である。これにNANTEN2で取得予定のCO 1-0, 2-1輝線を加えることで、原子・分子ガスそれぞれの密度・温度などの物理状態をより詳細に求めることが可能となる。分解能は大きく異なるが、データの平均化を行うことで対応する。観測対象となる分子雲は近傍に存在するため、比較的低い分解能でも問題はなく、分子雲ごとの進化段階の違いを調査することができる。またALMA望遠鏡には、おうし座領域におけるCI輝線観測のプロポーザルを提出した。採択されれば、へびつかい座に続いて高分解能でのガスの微細構造を調べることが可能となり、理論モデルや大きなスケールでの観測結果と合わせ、星間物質進化のモデル構築が大きく前進すると期待される。
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すべて 雑誌論文 (21件) (うち国際共著 7件、 査読あり 21件) 学会発表 (28件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
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