研究課題
超巨大ブラックホール(BH)の角運動量(スピン)を測定するには、BH周囲に形成された降着円盤の内縁で生成され、BHの相対論効果で広げられたFe-Kα輝線のプロファイルを利用する手法が有効である。相対論的Fe-Kαプロファイルを作成するためには、BH近傍の高温電子雲からのX線連続放射、およびそれが周辺で吸収・散乱されて生じる反射成分やBH遠方からの細い輝線・吸収線を精確に決定し、X線スペクトル上で差し引く必要がある。当該年度は、連続放射を生成する高温電子雲や降着円盤の構造や物理状態、質量降着率に伴う変化を調べるため、セイファート銀河のXMM-Newton、Swift、およびNuSTARによるX線、紫外線、可視光のモニタデータを解析した。その結果、代表的なセイファート銀河において、X線と紫外・可視光の間の相関や時間遅延を利用することで、高温電子雲と降着円盤の構造に対する制限が得られたとともに、質量降着率が高い際に円盤からのアウトフローによる電離吸収が卓越し、吸収の度合いが連続放射の強度と関係することを明らかにした。今後これらのモデル化を進め、相対論的Fe-Kαプロファイルを作成する際に差し引く連続放射スペクトルを定量化する。さらに、連続放射が周辺で吸収・散乱された結果生じる反射成分も制限する。2022年度打ち上げ予定のX線分光撮像衛星XRISMの初期観測 (Performance Verification期間) およびその後の公募観測に向け、本研究に適した複数の活動銀河核の観測の詳細について検討を行った。また、搭載されるX線CCD装置Xtendのフライト品および同一の設計を持つスペア品を用いて性能検証実験を進めるとともに、連続放射の決定精度などにも重要となる地上キャリブレーションを進めた。
3: やや遅れている
超巨大ブラックホール近傍で生成される連続放射のモデル化に向けて海外の研究機関に滞在する予定だったが、コロナウイルスの感染拡大により渡航および滞在ができなくなり、本作業の一部に遅れが生じた。
超巨大ブラックホール(BH)近傍で生成される連続放射、および多波長の時間変動解析から発見した連続放射と関連して時間変動する電離吸収の影響をモデル化する。加えて、BH近傍からの連続放射が、広輝線領域やダストトーラスなどで吸収・散乱されて生じる細いFe-Kα輝線のプロファイルや反射成分のスペクトルを精確に決定するため、X線分光のデータを、可視光分光および近赤外線データと比較し、細いFe-Kα輝線と反射成分が生成される領域に制限をつける。X線分光撮像衛星XRISMの打ち上げが2022年度中の予定であるため、打ち上げに向けた搭載検出器の性能検証作業を進め、打ち上げに備える。XRISMの公募観測に向けて、観測ターゲットを絞り込み、具体的な観測方法を検討する。
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すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件)
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