研究課題/領域番号 |
20H01953
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
梅畑 豪紀 名古屋大学, 高等研究院(理), 特任助教 (60783678)
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研究分担者 |
松田 有一 国立天文台, アルマプロジェクト, 助教 (20647268)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙網 / 銀河間物質 / 星形成銀河 / 巨大ブラックホール / 物質循環 / 共進化 |
研究実績の概要 |
冷たい暗黒物質モデルに立脚する現在の銀河形成理論において、重力進化の結果、暗黒物質やバリオンが蜘蛛の巣状のネットワーク構造、「宇宙網」を成していることが予言されてきた。この宇宙網を観測で捉えることは長年難しかったが、申請者らは水素ライマンα輝線を用いた宇宙網の直接撮像を初めて実現させ、宇宙網の観測的探究の扉を開きつつある。本研究では、この水素ライマンα輝線による宇宙網探査を発展させ、(i) 観測が先行してきた赤方偏移3.1の原始銀河団領域における宇宙網、および(ii) その前後の時代(赤方偏移2~5)の原始銀河団における宇宙網、それぞれについて銀河と宇宙網の双方の探査を推進する。銀河についてはALMA望遠鏡、ジェームズウェッブ望遠鏡などを、宇宙網についてはすばる望遠鏡、VLT望遠鏡、ケック望遠鏡を主要装置と位置付ける。そして宇宙網と銀河形成の共進化の解明を通して初期宇宙における銀河形成史の理解を大きく前進させることを目的とする。
研究3年度目および4年度目(繰越含む)においては、赤方偏移3.1の原始銀河団領域においてALMA望遠鏡による銀河の星間物質の探査に大きな進展が見られた。数百pcに迫る極めて高い角分解能による爆発的星形成銀河の観測、それには及ばないものの銀河内部を分解した電離炭素輝線による銀河の運動状態の観測などが達成され、宇宙網の中でこのような活動銀河がどのように形成・進化しているのかについて新たな知見が得られつつある。赤方偏移2~5の原始銀河団についても観測データに向けて積極的な観測提案が行われた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
チリにあるVLT望遠鏡の可視面分光装置MUSEは非常に高い競争倍率(~20倍)で知られる。毎サイクル観測提案を続けているものの、超高倍率の中、必ずしも観測提案が採択に結びつかないことも多かった。また競争を勝ち抜いて採択されても天候等の理由により不運にも観測が実行されないこともあった。そのような状況の中で、赤方偏移5付近の探査は宇宙網の観測データの取得に苦労している状況にある。一方でALMA望遠鏡による赤方偏移3.1の原始銀河団における銀河の観測については観測提案の採択、実際の観測実行、それぞれ非常に順調に推移している。高角分解能のダスト連続光、電離炭素輝線、低角分解能だが非常に高感度な分子ガス輝線など、多くのデータが取得されてきている。赤方偏移2の原始銀河団については水素ライマンα線を狙った新規観測は実現できていないが、既存データの解析、および銀河中の星間物質の観測提案採択(フランスのNOEMA望遠鏡など)は堅調に推移している。以上のような状況から、総合的には概ね順調に推移していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に大きな変更は予定していない。引き続き既存のデータの解析とともに、観測提案を進め必要な新規データの取得に努める。論文出版も適宜進める。
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