研究課題/領域番号 |
20H01983
|
配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
新屋 啓文 新潟大学, 災害・復興科学研究所, 准教授 (80794982)
|
研究分担者 |
富永 禎秀 新潟工科大学, 工学部, 教授 (00278079)
根本 征樹 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究部門, 主任研究員 (30425516)
大風 翼 東京工業大学, 環境・社会理工学院, 准教授 (40709739)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
|
キーワード | 吹雪 / 風洞実験 / ロードセル / せん断応力 / 跳躍層 / 変動性 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,吹雪や砂嵐に代表される固気混相流が引き起こす自然災害の基礎理解に資するため,風成作用による粒子輸送現象の発生・発達で主要な役割を担う地表面の侵食・堆積過程に着目している. 本年度(4年目)は,地表面せん断応力の直接計測に関する風洞実験と跳躍層の粒子輸送構造の変動性解明に向けた野外観測を実施した. 地表面せん断応力に関する風洞実験では,防災科学技術研究所新庄雪氷環境実験棟の大型境界層風洞の底面に3分力計(ロードセル)を配置し,その上部に硬化させた積雪を載せた.使用した3分力計は微小荷重を高精度に計測可能であるため,吹雪発生前および吹雪発生時の雪面せん断応力の直接計測を試みた.直接計測された雪面せん断応力を評価するため,風速分布から間接的に推定した流体せん断応力との比較も行った.その結果,雪面せん断応力は流体せん断応力を上回っていたが,これは風洞底面と風洞内部の圧力差による影響であった.風洞側面のドアを開放する等の対策を講じることで,雪面せん断応力は流体せん断応力と一致した.つまり,微小な雪面せん断応力を高精度に直接計測する実験系を構築することに成功した.一方,跳躍層を対象とした野外観測では,吹雪を対象とした粒子輸送構造の変動性を解明するため,雪面から20 cmの高さに飛雪粒子計測装置(Snow Particle Counter)を設置し,さらに,雪面から30 cmの高さに超音波風速計を取り付けた.飛雪粒子数データと風速データは1秒間隔で出力されており,両者の関係性を調べるに耐えうるデータセットである.測器を設置した2月中旬から3月下旬までの1ヶ月半において,観測データは途切れておらず,多様な吹雪イベントの収集することができた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
3分力計による地表面せん断応力の直接計測を行うための実験系を構築することができ,計測データのノイズ除去および計測精度は先行研究よりも向上していた.また,粒子輸送の跳躍層の変動性に係る風速・飛雪データはこれまでの風洞実験で取得されていたが,実現象を対象とした野外観測に成功した.風洞実験で再現可能な乱流のスケールに上限があるため,実験データと観測データの両者を解析することで,粒子輸送構造の変動性が明らかになると考えられる.以上のように,順調に進展していると判断する.
|
今後の研究の推進方策 |
翌年度は,これまでの風洞実験で得られたスプラッシュ過程の動画および雪面せん断応力の計測データを解析するとともに,本年度に構築した3分力計の実験系を用いて,積雪の焼結度合いや砂床の含水率を考慮した飛雪・飛砂の発生条件に関する風洞実験を進める.さらに,吹雪における輸送構造の変動性を解明するため,雪面から跳躍層,跳躍層から浮遊層への飛雪粒子の遷移過程に着目し,吹雪の野外観測を実施する.
|