研究課題
本研究は,振動から自律型センサの電源を得るための素子である振動型ハーベスタについて,高出力化のために振動性能指数を向上させると狭帯域になるという原理的な課題に対処するため,非線形性を素子内に導入することを目指している。特にMEMS化されたエナジーハーベスタに磁石による非線形性を導入することに着目し,圧電薄膜と磁石薄膜をモノリシック融合させたプロセスを確立するとともに,磁性・圧電による非線形効果を含めた電気・機械結合モデルの解析を行うことを目的としている。今年度は,圧電PZT薄膜と磁性NdFeB磁石薄膜を,同一シリコン基板上において成膜,微細加工する技術を確立した。PZTもNdFeBも高温プロセスによる成膜が必要であることに加え,所望の特性を持たない準安定相の存在や組成ずれなどの問題があったが,成膜の順番や成膜条件の検討を実施した。その結果,NdFeBをステンシルマスクによって所望の箇所に成膜したのち,バッファ層や電極を含めたPZTの成膜を行う製造プロセスにおいて,特性の成膜条件において機能膜が従来と同等の性能を持つことを確認した。成膜のみならず微細加工後もこれらの成膜が維持されていることを確認し,バッチ製造工程による素子製造が可能であることを実証した。この圧電・磁石融合が可能であることは,本研究の大前提であるため,研究遂行上重要な成果を得たと考える。次年度以降については,実際のデバイス応用に向けた素子構造の検討を行う。具体的には,電気・磁気・機械融合によって生じる非線形振動に関して解析を行い,エネルギマネジメント回路との接続を考慮した等価回路モデルについても検討を行う予定である。
2: おおむね順調に進展している
初年度にコロナ禍の影響により研究計画の大幅な遅れが生じたが,今年度は研究遂行上の大前提である圧電薄膜と磁石薄膜の融合に成功し,研究計画全体としてはおおむねに順調に進展しているといえる。
機能膜の集積化が可能であることが確認できたので,実際のデバイス応用に向けた素子構造の検討と電気・磁気・機械融合による非線形振動モデルの解析を実施する。
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