研究課題
2020年度は、動学的確率的最適化モデルの枠組みを応用して2種類のモデルの開発に取り組んだ。最初に、実物的防災対策のみを考慮したモデルを定式化した。モデルでは、洪水と干ばつのマルチハザードと、堤防、ダム、保険など複数の防災対策を考慮した。そして、パソコンで計算するための基本部分コードのプログラミングを行った。計算負荷の大きな多数ストックの計算を行うために、政策評価法を応用した計算アルゴリズムを開発して実装した。そしてアフリカ2か国(ザンビア、タンザニア)を対象としたケーススタディを行い、さまざまな視点から政策分析を行った。そこでは政策の総効果を、「災害リスク減少効果」や「共便益拡大効果」に分解した。「災害リスク減少効果」はさらに、災害時に被害を軽減する効果である「事後的被害軽減効果」と、リスクの減少が誘導する生産投資の拡大効果である「事前的リスク減少効果」に分解される。また、「共便益拡大効果」は、例えばダム建設の場合には、水資源確保と発電による直接的な生産要素の供給効果を示す。研究の成果は、国際総合防災学会(IDRiM)の年次会議や土木計画学研究発表会で口頭発表するとともに、The UN Global Assessment Report on Disaster Risk Reduction (GAR)に投稿した。今後データの取得によってパラメータの値の同定が可能になれば、より多様な防災対策の組み合わせの効果を計算することが可能になるものと考える。次いで、実物的対策と金融的対策の双方を考慮したモデルの開発に着手した。モデルの定式化を行い、基本部分コードのみのプログラミングに取り掛かった。
2: おおむね順調に進展している
本研究は、とりわけデータ整備や政策シナリオの設定のところで、オーストリアの国際応用システム分析研究所(IIASA)の研究者と協力している。新型コロナウィルスの影響で、当初に予定していた招へいは実現しなかったが、遠隔会議システムを用いた打ち合わせによって、必要なコミュニケーションの多くの部分をカバーすることができた。
2021年度も、現時点では新型コロナウィルスの収束の見通しはついていないものの、遠隔会議システムを用いた打ち合わせにも慣れてきたため、新型コロナウィルスが原因となることによる、当初の予定からの大きな遅れはないものと思われる。一方、一部のデータの入手が困難であることがわかり、それらの値を間接的に推計するアイデアが必要になっている。
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