研究課題/領域番号 |
20H02355
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
花田 俊也 九州大学, 工学研究院, 教授 (30264089)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙活動 / 長期的持続可能性 / 宇宙ごみ / 光学観測 |
研究実績の概要 |
充電池の加熱・過充電が原因であるロシア放送衛星EKRAN 2(国際標識77092A)の充電池破裂破砕を実験的に再現するため、人工衛星の縮尺模型に、ロシア放送衛星EKRAN 2の充電池が破裂した際のエネルギーに等価な爆薬を模型内部に配置し、爆破した。衛星本体は完全に破壊され、破片も多数発生したが、これは実際の状況(追跡されている破片比較的大きく、数は少ない)と異なる。そこで、ロシア放送衛星EKRAN 2の充電池が破裂した際のエネルギーに等価な爆薬を模型外部に配置し、爆破した。爆薬が配置されたところに穴は空いたが、衛星本体はほぼ完全な状態だった。このことから、ロシア放送衛星EKRAN 2(国際標識77092A)の充電池破裂破砕の破壊モードは、衛星本体内部に配置された充電池が破裂したことで発生したガス・破片等が衛星本体を内部から完全に破壊したというよりは,衛星本体外側に配置された充電池が破裂したことで発生したガス・破片等が衛星本体を外部から推したために付属物が衛星本体から分離したと考えた方がよく、実際の状況にも近いことが確認できた。また、東京大学木曽観測所シュミット望遠鏡用モザイクCMOSカメラによる可視光広視野動画サーベイ(トモエゴゼン)のデータに、多くの静止軌道近傍の人工物だけでなく、残留燃料の爆発が原因で比較的多くの破片を放出しているアメリカロケット上段機体TITAN 3C TRANSTAGE(国際標識68081E, 69013B)を起源とする破片も撮像されていることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍で,充電池の加熱・過充電が原因であるロシア放送衛星EKRAN 2(国際標識77092A)の充電池破裂破砕を人工衛星の縮尺模型とロシア放送衛星EKRAN 2の充電池が破裂した際のエネルギーに等価な爆薬を用いて再現する充電池破裂破砕実験の準備が遅れた上,ロシア放送衛星EKRAN 2の充電池が破裂した際のエネルギーに等価な爆薬を模型内部に配置し、爆破した場合、衛星本体は完全に破壊され、比較的多くの破片を放出し、実際の状況(追跡されている破片数が少ない)と異なるため、ロシア放送衛星EKRAN 2の充電池が破裂した際の破壊モードは、当初想定した内部エネルギーの解放により衛星本体が完全に破壊されたというよりは、本体外側に配置された充電池が破裂したことで,充電池から発生したガス・破片等が本体を推したために付属物が衛星本体から分離した、と考えられるため、その検証として、追加で、ロシア放送衛星EKRAN 2の充電池が破裂した際のエネルギーに等価な爆薬を模型外部に配置し、爆破したため。
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今後の研究の推進方策 |
アメリカ航空宇宙局の標準破砕モデルおよび欧州宇宙機関の改良版破砕モデルを参考に、ロシア放送衛星EKRAN 2の破壊モード(衛星本体外側に配置された充電池が破裂したことで発生したガス・破片等が衛星本体を外部から推したために付属物が衛星本体から分離)を記述する破砕モデル(数学モデル)を構築し、実際に充電池破裂破砕を経験したロシア放送衛星EKRAN 2および軌道異常を経験しているロシア放送衛星EKRAN 4(国際標識79087A)に適用し、研究代表者が保有するペガスス天体観測室向けに観測計画を立案し、ロシア放送衛星EKRAN 2およびEKRAN 4の破片探索を実施する。また、同時に、現在も追跡されているロシア放送衛星EKRAN 2およびEKRAN 4(国際標識79087A)の軌道情報を参考に、二つの軌道が交差する位置が東京大学木曽観測所から観測できる日時にトモエゴゼンによる観測を依頼することで、上記とは異なるアプローチで本観測計画立案手法の検証を試みることで進捗を加速させる。
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