研究課題/領域番号 |
20H02355
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
花田 俊也 九州大学, 工学研究院, 教授 (30264089)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 宇宙活動 / 長期的持続可能性 / 宇宙ごみ / 光学観測 |
研究実績の概要 |
アメリカ航空宇宙局の標準破砕モデルおよび欧州宇宙機関の改良版破砕モデルに制約(具体的には破片のサイズを1 m以上に制約、また、単一の正規分布で記述されている破片の面積質量比→破片の放出速度の信頼区間を68.2%に制約)を付加する形で、ロシア放送衛星EKRAN 2(国際標識77092A)の破壊モード(具体的には衛星本体外側に配置された充電池が破裂したことで発生したガス・破片等が衛星本体を外部から推したために付属物が衛星本体から分離)を記述する破砕モデル(数学モデル)を構築した。実際に充電池破裂破砕を経験したロシア放送衛星EKRAN 2に適用し、研究代表者が保有するペガスス天体観測室向けに観測計画を立案し、ロシア放送衛星EKRAN 2の破片を探索したが、静止軌道近傍の人工物は何も撮像されなかった。また、構築した破砕モデルを東京大学木曽観測所シュミット望遠鏡用モザイクCMOSカメラによる可視光広視野動画サーベイ(トモエゴゼン)のデータでロシア放送衛星EKRAN 2とその破片が撮像された日にも適用して観測計画を立案し、比較・検証した.しかし、計画された座標とロシア放送衛星EKRAN 2とその破片が撮像された座標は一致するものの計画された時刻と撮像された時刻は一致しなかった。このことから、ロシア放送衛星EKRAN 2の破砕事象は比較的規模が小さく、破片の数が極めて少ないので、破片の存在量を時間平均する提案手法では適切に観測計画を立案できなかったと結論づけた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
充電池の加熱・過充電が原因であるロシア放送衛星EKRAN 2(国際標識77092A)の充電池破裂破砕を人工衛星の縮尺模型とロシア放送衛星EKRAN 2の充電池が破裂した際のエネルギーに等価な爆薬を模型内部に配置し、再現を試みた。しかし、衛星模型は完全に破壊され、比較的多くの破片を放出し、実際の状況(具体的には追跡されている破片は比較的大きいが数は少ない、また、J22 摂動の影響を強く受けている破片がある)と異なるため、ロシア放送衛星EKRAN 2の充電池が破裂した際の破壊モードは、本体外側に配置された充電池が破裂したことで,充電池から発生したガス・破片等が本体を推したために付属物が衛星本体から分離した、と考えた。そのため、追加で、ロシア放送衛星EKRAN 2の充電池が破裂した際のエネルギーに等価な爆薬を模型外部に配置し、再現を試みた。爆薬が配置された衛星模型の外壁に穴が空いただけで、発生した破片も少なく、衛星本体に加えられた速度も小さく、実際の状況に近いことが検証できた。アメリカ航空宇宙局の標準破砕モデルおよび欧州宇宙機関の改良版破砕モデルに制約を付加する形で検証結果を反映し、ロシア放送衛星EKRAN 2の破片を探索する計画を立案するも検出できなかった。また、東京大学木曽観測所シュミット望遠鏡用モザイクCMOSカメラによる可視光広視野動画サーベイ(トモエゴゼン)のデータでロシア放送衛星EKRAN 2とその破片が撮像された座標と日時を検証できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題においては不都合な新知見であるが、ロシア放送衛星EKRAN 2の破壊モードは、衛星本体外側に配置された充電池が破裂したことで発生したガス・破片等が衛星本体を外部から推したために付属物が衛星本体から分離した比較的小規模な破砕であったと考えるに至った。そのため、トモエゴゼンのデータと比較・検証することで本手法を再検討することを最優先事項とする。具体的には、トモエゴゼンのデータでロシア放送衛星EKRAN 2とその破片が撮像された日の観測計画を破片の存在量を時間平均せず、それにともない測心座標系で破片の存在量を評価することで立案し、比較・検証することで改善を試みる。また、ロシア放送衛星EKRAN 2の破片は極めて数が少ないので、研究代表者が保有するペガスス天体観測室を使用する観測を継続し、データを蓄積することに専念するしかない。
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