研究課題/領域番号 |
20H02737
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
倉橋 拓也 京都大学, 工学研究科, 准教授 (50432365)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ニッケル触媒 / Operando XAFS / Operando EPR / スペクトルシミュレーション / 量子化学計算 / Steric Congestion / 非共有結合性相互作用 / ベイズ最適化 |
研究実績の概要 |
有機合成において炭素-炭素結合反応は、最も基本的かつ重要な反応であり、分子骨格の構築において必要不可欠なものである。1983年に高井和彦と野崎一によって開発された塩化クロムを当量還元剤として用いるニッケル触媒によるアルデヒドとハロゲン化アルケニルのカップリング反応(Nozaki-Hiyama-Kishi反応)は、温和な条件下で官能基選択的な炭素-炭素結合形成によるアリルアルコール合成法の極めて有効な合成方法である。したがってその発見以来、抗腫瘍性化合物であるhilichondrin B など、様々な官能基を含む複雑な天然物合成の合成にも応用されてきた。反応活性種として生成するアルケニルクロム反応剤に対して不斉配位子を用いれば、立体選択的にアリルアルコールが合成できることも明らかとなっている。その一方で、毒性の高い塩化クロム(II)を全く使用しない、カップリング反応の実現が長らく望まれているが、未だ実現していない。この様な現状に鑑みて、本課題研究では塩化クロム(II)を使用しない立体選択的・官能基選択的なアルデヒドとハロゲン化アルケニルのカップリング反応を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題研究では、塩化クロム(II)を使用しない立体選択的・官能基選択的なアルデヒドとハロゲン化アルケニルのカップリング反応を開発する。 これまでのニッケル触媒反応開発に関する研究結果から、3d遷移金属であるニッケルが配位子により異なるスピン状態および構造に由来する固 有の反応性を有していることを明らかにしている。実際に、配位子としてbpy誘導体を用いることで、ハロゲン化アルケニルとアルデヒドの官 能基選択的なカップリング反応が進行することを確認した。この反応では、ニッケルとアルデヒドおよびハロゲン化ケイ素により酸化的付加体が生成し、一電子還元によりニッケル(I)錯体が生成する。これに対して、ハロゲン化アルケニルの酸化的付加と続く還元的脱離によってアリルアルコールが生成すると考えている。配位子としてbpy誘導体を用いることで、三重項ニッケル(II)の生成が優先される結果、続く一電子還元の活性化エネルギーが低下して、ニッケル(I)錯体への還元が可能となっていると推定している。従来型とは異なる触媒反応経路により塩化クロム(II)の使用が不要となった。
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今後の研究の推進方策 |
現状では反応収率が必ずしも高くない。また、副生成物としてピナコ ールカップリング体を生じる場合があるなど、解決が必要な課題がある。そこで、反応機構および触媒機能解析を実施して、その結果を基に新たに配位子を設計・合成することで、この課題解決を図る。
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