研究課題/領域番号 |
20H02737
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
倉橋 拓也 関西学院大学, 理学部, 教授 (50432365)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | ニッケル触媒 / コバルト触媒 / operando XAFS / operando EPR / 反応設計 / 選択的反応 |
研究実績の概要 |
本研究では、塩化クロム(II)を使用しない立体選択的・官能基選択的なアルデヒドとハロゲン化アルケニルのカップリング反応を開発する。これまでのニッケル 触媒反応開発に関する研究結果から、3d遷移金属であるニッケルが配位子により異なるスピン状態および構造に由来する固有の反応性を有していることを明らか にしている。実際に、配位子としてbpy誘導体を用いることで、ハロゲン化アルケニルとアルデヒドの官能基選択的なカップリング反応が進行することを確認している。この反応では、ニッケルとアルデヒドおよびハロゲン化ケイ素により酸化的付加体が生成し、一電子還元によりニッケル(I)錯体が生成する。これに対し て、ハロゲン化アルケニルの酸化的付加と続く還元的脱離によってアリルアルコールが生成すると考えている。配位子としてbpy誘導体を用いることで、三重項 ニッケル(II)の生成が優先される結果、続く一電子還元の活性化エネルギーが低下して、ニッケル(I)錯体への還元が可能となっていると推定している。実際に分光測定および理論化学計算により、この仮説が尤もらしいことを確認した。さらに、XAFS測定においても確認することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
d遷移金属元素、すなわち鉄やニッケルのイオンは最外殻電子軌道として3d軌道を有している。したがって、主量子数のより大きい遷移金属元素、例えば4d遷移 金属元素であるパラジウムや5d遷移金属元素の白金などよりも、炭素や窒素、酸素原子が有する最外殻軌道との軌道のエネルギー準位が近いために、有機合成に おいて結合の形成を促す触媒として本質的に潜在能力が高い。実際に、様々な形式の遷移金属触媒反応が鉄などの3d遷移金属元素で置き換え可能であることが近 年示されている。一方、3d遷移金属元素は3d 軌道における電子の局在性・方向性が強く、電子分極率、つまり『電気的なやわらかさ』が低い。したがって、反応設計において配位子の選択は4dまたは5d遷移金属元素を用いる場合よりも、いわゆる『空間的構造と電子的構造』の観点から厳密に行う必要がある。本研究では、溶液XAFS測定や量子化学計算をもとにして触媒となる錯体の構造を明らかにした。現在までに、当初に予定していた溶液中の触媒構造の解析など、研究課題目的を達成するために必要な情報ならびに知見の収集を達成した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究で明らかにした知見をもとにして、ニッケル以外の金属をもちいる触媒反応への応用を検討する。具体的にはコバルト触媒の活用を検討する。
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