研究実績の概要 |
高い熱電特性を有する機能性半導体材料や複合材料の実現を目指し、低次元材料、ナノ材料における熱電効果の探索が世界中で進められている。それと同時に、興味深い新規材料が合成され、また理論計算からも新たに熱電材料の提案がなされている。本研究では、様々なナノ材料の熱電特性を評価する方法の開発や、それを用いた新規熱電材料の探索を行う。特に、電気二重層トランジスタを用いた電子物性の精密制御技術は、ナノ材料の有するポテンシャルを開拓する上で極めて有力なツールとなる(Advanced Materials 29, 1607054 (2017).)。 本年度は、高い熱電特性を示すことが知られるSnSeを取り上げ、薄膜作製および熱電効果測定を行った。大気中でのアニールにより、キャリアが電子からホールに代わること、またそれにともないゼーベック係数の符号が反転することを示した。また、アニール前のゼーベック係数は+800 uV/K程度であるが、アニール後には-450 uV/Kへと、1200 uV/Kもの大きな変化が起こる。光学特性の測定からバンドギャップが変化すること、X線回折およびEDXの結果から、元々p型であるSnSeの表面がn型に変化することを明らかにした。本成果はScientific Reports 11, 1637 (2021).において報告した。 さらに、基板効果を利用した六方晶WO3の測定を開始し、熱電特性の温度-キャリア濃度依存性の測定を進めている。上記の結果と合わせて2022年度に学会および論文発表を行う。
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