研究実績の概要 |
本研究は、一般的には永久磁石にはならないことで知られる鉄コバルト合金(FeCo)において、結晶構造や組織を人工的に制御することで永久磁石特性の向上をはかることを目的とする。FeCoは全遷移金属合金中で最大の磁化を有するが、結晶構造が立方晶(より正しくは体心立方晶bcc)であるため、そのままでは磁気異方性と保磁力が極めて小さいために永久磁石にはなれないと考えられている。そこで本研究では、FeCoの結晶構造を正方晶(bct)に変形させ、さらに組織をナノスケールに微細加工することで、結晶磁気異方性と保磁力の向上をはかる。本年度は、まず理論計算によってFeCoXのbct構造の形成エネルギーを最小化する添加元素Xの探索を行い、次いで成膜実験での確認を行った。理論計算では商用の第一原理計算機を使用して密度汎関数理論DFTに基づく擬ポテンシャル法を用いた。成膜実験では超高真空多元合金マグネトロンスパッタ装置を用いて、MgO単結晶基板上にRh下地を成膜し、その上にFeCoX磁性薄膜を成膜し、その上に酸化防止層としてSiO2キャップ層を成膜した。理論計算による添加元素X探索の結果、X=VN, VZrN, VTaNにおいてbct構造が安定化することが示された。次いで成膜実験の結果、これらの中ではX=VNがbct構造を最も安定化することがわかった。今後は、理論計算による添加元素Xの探索を引き続き行い、FeCoXのbct構造をより一層安定化させる効果をもつ添加元素Xを明らかにし、次いで成膜実験での確認を行っていく。
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