研究課題
本研究では、高出力カリウムイオン電池(KIB)用有機電解液の実現を目指すために、KIB用負極として有望な黒鉛をモデル電極材料とし、急速充放電特性の電解液依存性を調査することで、電極反応抵抗を極限まで低下させる電解液の設計指針を確立する。それと並行して,カリウム挿入型電極材料の創製と電気化学特性の評価を進め,最終的に、現行リチウムイオン電池を凌ぐ急速充放電性能をKIBにおいて5年間の取り組みで実証する。初年度となる2020年度は,コロナウイルス感染症の影響もあったが,研究室での感染対策を講じながら論文発表にも力を入れ以下のような実績を得た。カリウムイオン含有の有機電解液として,二種のアニオンを混合し,Al不動態化と負極保護被膜の形成を両立できる機能分担型二元系電解液を開発した。さらにグライム系溶媒にKイオンの配位構造を制御した高濃度グライム溶液を調整し,500サイクル以上の長期安定充放電を達成した。同時に,FSI系イオン液体を用いたカリウムイオン電池の作動も成功した。これらの成果は,黒鉛負極およびヘキサシアノ鉄マンガンカリウム正極を用いており,今後さらに電極反応の律速段階に関する解析を電気化学分析法を用いて取り組む。その解析の一環として,正負極材料へのカリウム脱挿入時の結晶構造変化と最適構造についても検討を行いつつ,カリウムインサーションの材料探索も行っている。また,カリウムの移動律速段階を把握するために,LiやNa電池の電極反応とも比較を行い,キャリアイオンの違いが電池の電極反応速度に与える影響について検討を開始した。以上の研究成果を国際誌に発表した。残念ながら,国内外の学会の多くが中止になったため,学会発表の実績は限られたものとなったが,感染症対策を進めながら研究実績を着実に上げている。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画では電解液設計と予定していたが,研究開始以前の研究準備段階で有機電解液の開発が進み,電極材料や電池充放電の調査が予定以上に進んだため。それと合わせて,コロナ禍で在宅勤務となり,論文発表が計画以上に進んだ。一方で,研究室内での化学実験では「三密」を避けるための制約があったため,次年度以降には若干の懸念が残る。
初年度の成果を基に,電解液の溶液構造や物性調査をさらに深化させて,特に黒鉛電極をモデル電極とした電気化学測定,律速段階の調査を進める予定である。さらにカリウムインサーション材料の探索やリチウム,ナトリウム系との電極反応との比較・検討も加速させる。それら学術調査と並行して,高出力電池の実現に寄与する全電池の急速充放電試験も推進する。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 1件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 2件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (2件)
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