研究実績の概要 |
レアメタル不使用で高出力を示すカリウムイオン電池(KIB)用有機電解液の実現を目指し、本研究ではKIB用負極として有望な黒鉛をモデル電極材料とし、急速充放電特性の電解液依存性を調査することで、電極反応抵抗を低下させる電解液の設計指針を確立する。それと並行して,カリウム挿入型電極材料の創製と電気化学特性の評価を進め,最終的に、現行リチウムイオン電池を凌ぐ急速充放電性能をKIBにおいて5年間の取り組みで実証する。 2020年度までに,カリウムイオン含有の有機電解液として,塩濃度や多元系塩,溶媒の違いにおける黒鉛電極の電気化学特性について調査した成果をベースに,2021年度は,カリウム黒鉛層間化合物の相転移の解析,電解液添加剤の探索と機能発現機構,さらに電極用黒鉛の結晶性の影響について調査を行った。 黒鉛電極での相転移について,オペランドX線回折を用いて,K挿入・脱離時の結晶構造,とくにステージ構造,結晶子,結晶欠陥の変化を詳細に追跡した。さらに,結晶性の異なる黒鉛における相転移挙動を比較した結果,低結晶性黒鉛ではカリウムの脱挿入による結晶性低下が著しく,それと同時に蓄電容量の低下が進行することも突き止めた。 黒鉛電極での調査結果を基に,新しい電解液添加剤を探索するためにいくつかの有機化合物を電解液に微量添加して電気化学測定を行った。その中で,1,3,2-Dioxathiolane 2,2-Dioxideが金属カリウムの不動態化を促進し,安定な酸化還元応答を示すことを突き止めた。 以上の研究成果等を国際誌に発表した。2022年度は,カリウムの移動律速段階を把握するために,LiやNa, Rb電池の電極反応とも比較を行い,キャリアイオンの違いが電池の電極反応速度に与える影響や,新しいカリウムインサーション材料の研究について検討を開始している。
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