温暖化に伴い、森林分布が拡大することが予測されている。樹木はその成長に必要な養水分を根で共生する外生菌根菌を介して吸収しているため、実生の定着や分布域の拡大には菌根共生が必要である。本研究では、樹木の生育していない非森林帯に樹木実生が定着するために適した条件を検証することを目的とする。当該年度は北東シベリアで現地調査を実施し、ツンドラ帯においてダフリアカラマツ(Larix cajanderi、以下、カラマツ)の播種実験と種子供給量の推定を開始した。林縁からツンドラ帯にかけて1000mのトランセクトを設置し、種子トラップを設置した。また発芽率と実生定着率、菌根形成率を明らかにするため、異なる植生帯ごとにカラマツの種子を播種した。種子は現地で採取したものと市販のものを使用した。
また東シベリアの森林境界-ツンドラ帯の土壌および既存の植物根から得られた菌根菌のデータを解析し、カラマツに優占する菌種の特定および群集解析を進めた。結果、ツンドラ帯の既存の植物から多様な菌根菌種が確認されたが、カラマツに共生する菌群集とは有意に異なる傾向が明らかとなった。一方でカラマツに共生する菌根菌種の多様性は低く、宿主特異的な菌種の優占率が高い傾向が示された。森林境界のカラマツ根端からはカラマツショウロ(Rhizopogon laricinus)が高頻度で確認されており、カラマツの成長に寄与している可能性が考えられることから、本菌種がどの程度実生成長に寄与しているか明らかにするため、育苗と接種実験を開始した。
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