研究課題/領域番号 |
20H03084
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
鈴木 宣弘 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 教授 (80304765)
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研究分担者 |
前田 幸嗣 九州大学, 農学研究院, 教授 (20274524)
佐藤 赳 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 助教 (30756599)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 双方寡占 / 需要分析 / 農産物貿易 / 政策評価 / シミュレーション |
研究実績の概要 |
今日のフードシステムは,市場の競争構造を明らかにし,社会経済厚生への影響を定量的に評価することが極めて重要な課題となっている.川上から川下までの農産物流通を俯瞰的に考察するためには,生産者・卸売業者・小売等によって構成される多段階の垂直的競争や,水平的競争を同時に検討する必要があり,この市場構造の特定には,一方の寡占・独占を前提としない,双方寡占モデルの適用が考えられる.本研究では,双方寡占モデルの推定により,フードシステムの市場構造を明らかにし,何らかの外部的なショックや政策変化が起きた場合の社会厚生の変化をシミュレーションする狙いがある.最終的に,生産者・消費者双方に公正かつ効率的な市場構造,及び,それを導くような現実的かつ適切な農業・農産物貿易政策を導出することを目標としている. 当該年度では,双方寡占の理論モデルを解き,日本の青果物市場データを用いた実証的に検証を行った.この推定はパラメータの識別が困難であることから推定結果が不安定となるというもんだいがあったが,非線形の最適化方法を採用することによって課題を解決している.他方,表明選好法を用いた需要分析にも注力し,農業生産の見える化技術採用に伴う日本消費者の中国産農産物に対する支払い意思額の推定や,中国農家の農業生産の見える化技術に対する受け入れ意思額の推定を通じて,農産物の需要・共有の分析を進めた.その結果,農業生産の見える化技術によって市場構造を歪める情報の非対称性を部分的に解決し,産地による価格の変化を軽減する効果があること確認された.そのほか,農産物生産の現場において,安定的な生産のために重要な,外国人実習生の実態や有機農業就農に関する経済分析も進めている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度はコロナの蔓延下で市場の現地調査や,海外出張が十分に行えなかったことから,理論モデルや統計分析手法の検討,ウェブを通じたアンケート調査によるデータの取得・解析を中心に研究を進めた.統計分析手法の検討においては,双方寡占の理論モデルを実データに適用し,パワーパラメータが適切に推定するという成果が得られている.ウェブを通じたアンケート調査から,表明選好法を適用した市場の経済分析の比重が当初より増大したが,研究そのものは,複数の学会発表などの具体的な成果を伴い,概ね順調に進展していると評価できるものである.
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスワクチンの3回摂取が進み、まん延防止等重点措置は,18の都道府県で令和4年3月22日に終了するなど,出張・調査の環境を大きく改善している.また,現地調査や出張に頼らずともモデルやデータに関するウェブ調査や,オンラインでの意見交換が容易な環境が整っており,仮に新型コロナウイルスが再び蔓延したとしても,概ね問題なく研究計画が進められるものである.
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