研究課題
コメの供給過剰を回避しつつ、水田を維持するために飼料イネの栽培が増加している。本研究では、土壌養分を収奪し持続的イネ生産を阻害すると批判される飼料イネが、実は根系によって土壌養分を良好な状態に維持することで、イネ生産の持続性に大きく貢献するのではないかという逆説を検証する。平成30年から開始した連続栽培水田(実験田)にて本研究を実施している。三重大学の水田圃場を30分割し、15処理×2反復の区画を設定した。各反復に穂が小さい飼料イネ品種たちすずかと、比較品種として穂が大きい飼料イネ品種クサノホシおよび食用イネ品種コシヒカリを栽培した。また、植物がない場合の土壌養分の変化を確認するため無植栽区を設けた。成熟期に飼料生産を模して全品種の地上部全量を刈取った。ただし食用イネ品種で、通常栽培を模して地上部を細断し土壌へ還元する区を設けた。刈取り後、全品種の根を除去する区と無処理区を設けた。イネは必須栄養素として多量のケイ素を茎葉部に蓄積する。地上部全量の持ち出しによりケイ素が土壌へ還元されないため、土壌のケイ素欠乏を誘発する可能性が指摘されている。そこで、平成31年(令和元年)の栽培直前に全品種でケイ酸施用区と無施用区を設けた。令和2年にも実験田でイネ3品種を栽培した。成熟期に穂、葉身、茎、根を採取し、部位別乾物重量を測定した。採取後、茎葉還元、根系除去、ケイ酸施用を処理した。コロナ禍で研究活動が大きく制限されたため、計画していた植物体の成分分析や土壌分析が遅延している。イネ茎葉の土壌還元によりイネ収量が高位安定化するまでに少なくとも数年は掛かることが予測される。根系の効果発現にも同様に数年かかると予測されるため、最長5年間の研究を予定する。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍による入構規制によって研究活動が大きく制限されたものの、令和2年に予定されていたイネ栽培を何とか継続し、バイオマス収量も計測することができた。ただし、植物体の成分分析や土壌分析が予定と比較して少し遅延している。
令和3年以降も引き続き実験田の維持、植物と土壌の解析を進めていく。ただし、令和3年4月26日現在、再びコロナ禍により入構が規制されたため、まずは実験田の維持管理に全力注ぎ、可能な限り多くの解析を進めるという方針を立てている。
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Animal Science Journal
巻: 92 ページ: e13530
10.1111/asj.13530
畜産技術
巻: 785 ページ: 2-6