研究課題
1. SGLT2阻害剤による治療効果:糖尿病発症直後からSGLT2含有飼料を長期間給餌することによる治療効果を調査した。治療開始直後、血糖値は正常レベルに低下し、その後も低いレベルが維持された。それに伴い、多飲多尿や尿中への電解質およびタンパク質排泄など、調査したほぼ全てのパラーメータで改善が見られた。しかし、SGLT2により血糖値が低下したにも関わらず、腎サイズの増大は抑制されなかったことから、腎サイズの増大は高血糖により二次的に生じるのではなく、むしろ糖尿病の発症と関連し、尿細管の糖再吸収と言う腎機能の抑制によって糖尿病の発症が阻止されることが明らかとなった。2. 糖尿病に対する腎実質寄与の評価:増大した腎実質が糖尿病の発症を促進すると言う仮説を検証するために、片側腎を摘出して影響を評価した。発症後50日を経過した後での片側腎摘出の場合、血糖値は低下せず、残存腎のサイズも急速に増大し、糖尿病の重症化も阻止されなかった。発症前および発症直後の片側腎摘出では糖尿病の発症が抑制され、偽手術群よりも低い血糖値が維持されたことから、増大した腎実質が糖尿病の発症を促進することが明らかとなった。発症では、個々の尿細管内腔が拡張し、腎臓全体で尿細管領域が拡大しているため、尿細管上皮細胞に関して炎症性マーカーと細胞増殖活性を評価した。糖尿病を発症した動物では、炎症性マーカーが上昇するともに、PCNA陽性細胞が増加していた。亢進した増殖活性が、尿細管サイズが増大に寄与する可能性が示唆された。3. 原因遺伝子の探索:外交配により得られた戻し交配子について、腎臓重量の重い個体から順に、腎臓の組織検索を行うと同時に、各染色体に配置した多型マーカーによりQTL解析を行った。腎重量の重い個体では尿細管の拡張が確認された。さらに、腎臓重量の増大に関連する遺伝子は12番染色体上にマップされた。
2: おおむね順調に進展している
当初予定していた、糖尿病発症に対する腎実質の影響を調べる動物実験、腎臓の機能状態を評価するためのRNAの採取、候補遺伝子の解析のためのQTL解析のいずれもほぼ予定通り進んでいる。
昨年度はほぼ予定通りに研究を進めることができたため、本年度も当初の計画に沿った研究を進める予定である。一方で、腎重量の増加に関連してマップした領域には、背景のLEA系統で既報の遺伝的変異が存在する。今後、その変異が糖尿病の発症や腎サイズ増大の原因となりうるのか否か、それを原因として仮定した場合に、どのようなメカニズムで特異的な病態が発生するのかを明らかにする必要性が出てくると考えられる。
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