研究課題/領域番号 |
20H03310
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高山 浩司 京都大学, 理学研究科, 准教授 (60647478)
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研究分担者 |
田村 実 京都大学, 理学研究科, 教授 (20227292)
布施 静香 京都大学, 理学研究科, 助教 (30344386)
梶田 忠 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (80301117)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 海流散布植物 / 系統地理 / 種子散布 / 種分化 / 局所適応 / 集団ゲノミクス / 日本列島 / 小笠原諸島 |
研究実績の概要 |
本研究では、汎熱帯海流散布植物の分布周縁における地域固有種の進化過程を解明することを目的としている。日本列島の温帯海岸域や小笠原諸島には、汎熱帯海流散布植物から派生したと推測される地域固有種が複数存在する。これら複数の分類群に着目して、(1)地域固有種を生み出した集団動態、(2)種分化・集団分化のパターンをもたらす自然選択、(3)地域固有種を生み出した地史的背景を解明する。 1.試料収集:オオハマボウ、ナガミハマナタマメ、ハマオモト、グンバイヒルガオおよびそれら近縁種のDNAおよびRNA試料を日本国内で収集した。 2.オオハマボウと近縁種の系統解析:既存の試料と今回採集した試料を合わせて、葉緑体全ゲノムとゲノムワイド一塩基多型解析に基づく系統解析を実施した。各近縁種の系統関係に関して、解像度の高い系統樹を得ることができた。葉緑体全ゲノムと核の一塩基多型解析に基づく系統樹の間では、樹形に大きな食い違いが見られた。葉緑体全ゲノムに基づく系統解析では、日本列島の温帯海岸域に生育するハマボウと小笠原諸島に生育するモンテンボクは、オオハマボウから独立に種分化したという従来の仮説が支持されたが、核の一塩基多型解析に基づく系統解析では、ハマボウとモンテンボクは共通祖先から進化したという結果となった。系統不一致の原因として、過去の遺伝子流動の可能性をABBA/BABAテストにより検討したが、種間あるいは地域系統間の遺伝子流動は限定的であり、ハマボウとモンテンボクではその痕跡は見られなかった。以上より、オオハマボウ祖先集団の急速な分布拡大とそれに伴う葉緑体ゲノムの祖先多型の維持が、葉緑体と核の系統の不一致の原因であると推測した。本成果の一部を日本植物分類学会で発表した。 3.ナガミハマナタマメの集団ゲノミクス解析:集団ゲノミクス解析に先駆けて、葉緑体全ゲノム配列を決定し、出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルスの影響で、海外での試料収集を行うことができなかったが、国内での試料収集の規模を拡大し、一定の成果を得ることができている。また、集団ゲノミクス解析も一部の分類群で先行して実施し、期待していた以上の成果を得ることができている。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き海外での試料収集が困難である場合は、国内での試料収集に重点を置き、解析を進めていく。また、海外研究者に試料の提供を依頼するなど検討する。試料の収集が不十分な場合でも、既存の試料で集団ゲノミクス解析を進めていきながら、最終的な研究計画に遅れが生じないようにする。
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