• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2022 年度 実績報告書

琉球列島の洞窟水圏環境における生物多様性の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20H03313
配分区分補助金
研究機関沖縄県立芸術大学

研究代表者

藤田 喜久  沖縄県立芸術大学, 音楽学部, 教授 (20771463)

研究分担者 下村 通誉  京都大学, フィールド科学教育研究センター, 准教授 (30359476)
井口 亮  国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50547502)
岡西 政典  広島修道大学, 人間環境学部, 助教 (70639278)
角井 敬知  北海道大学, 理学研究院, 講師 (70723360)
斉藤 知己  高知大学, 教育研究部総合科学系複合領域科学部門, 教授 (80632603)
研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2025-03-31
キーワード洞窟水圏環境 / 生物多様性 / 海底洞窟 / アンキアライン環境 / 保護・保全
研究実績の概要

本研究では、1)洞窟水圏性動物の種多様性、2)洞窟水圏性動物の分子系統・適応進化、3)洞窟水圏における動物群集の構造と個体群維持機構の3つの主要研究テーマに注力した調査研究を実施し、当該地域の洞窟水圏における生物多様性の全容を解明することを目的としている。2022年度は、沖縄島、伊江島、宮古島および下地島の海底洞窟における合同野外調査を実施し、さらに沖永良部島・与論島・多良間島の陸域洞窟での調査を実施することができた。その結果、以下のような研究実績を挙げることができた。
「1)洞窟水圏性動物の種多様性」と「2)洞窟水圏性動物の分子系統・適応進化」の研究項目については、採集された生物の分類学的研究を進め、遺伝子解析作業も進めることができた。 これらの研究成果(の一部)として、新種記載論文2編および新産地報告論文3編の出版と、2題の学会発表を実施することができた。また、さらに3編の新種記載論文の投稿も行い、次年度(2023年度)に出版される予定である。
一方、「3)洞窟水圏における動物群集の構造と個体群維持機構」の研究項目については、調査対象の洞窟の洞内形態の特性を可視化するために、最新のフォトグラメトリー技術(SfM-MVS)を用いて、3D測量手法および洞窟地形図作成の試験実施を行った。得られたデータは次年度(2023年度)に解析を行い、今後の研究の進展を図る予定である。また、多良間島固有の地下水性甲殻類であるタラマメアミを保護・保全するための生態研究を通年にて実施し、周年の繁殖を確認した。
これらの研究成果に加え、講演会(多良間・宮古・与論)や地域行政との調整など、洞窟水圏生物の保護・保全に向けたアウトリーチ活動も実施し、沖縄県希少野生動植物保護条例の指定種に洞窟性動物が3種追加指定され(本年1月1日付指定)、過年度までの研究成果の社会還元を少なからず果たすことができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初予定していた野外調査(生物採集合同調査、3D測量による洞窟地形図作成の予備調査など)がほぼ順調に進み、データも集まっているため。今後は、データの解析と論文化をさらに進める必要がある。
過年度までの調査研究結果を活用した洞窟水圏生物の保護・保全に向けたアウトリーチ活動をようやく開始することができ、初年度より一定の成果を挙げること(沖縄県希少野生動植物保護条例の指定種に洞窟性動物が3種追加指定された)ができたため。
一方、新型コロナウイルス感染症の余波が残っている状態でもあり、国外研究者を招聘したワークショップ実施の計画・準備の進捗状況は芳しくなかった。洞窟水圏生物研究のさらなる発展を目指すためには、国内外の研究者間にて交流・連携を進めることが重要であり、今後、注力する必要がある。

今後の研究の推進方策

本年度(2022年度)は、充実した野外調査を実施することができたため、次年度(2023年度)の野外調査は、過年度研究の補足調査のみに限定し、次々年度(最終年度:2024年度)の最終取りまとめに向けたデータ解析や論文執筆に注力する予定である。本研究の3つの主要研究テーマ(洞窟水圏性動物の種多様性、洞窟水圏性動物の分子系統と適応進化、洞窟水圏における動物群集の構造と個体群維持機構)に係る次年度以降の研究計画は以下の通りである。
1)洞窟水圏性動物の種多様性研究:過年度に引き続き、これまでに得られた未記載種の記載分類学的研究(論文執筆)を加速させる。野外調査は、記載分類学的研究に不足している種のみに限定し、採集調査を実施する。
2)洞窟水圏性動物の分子系統と適応進化:過年度に引き続き、採集した動物種のDNAバーコーディング作業を進め、これを基盤とした海底洞窟内での環境DNA調査と解析を行う。また、分類学的・生態学的に「特筆すべき種」について、分子系統解析や集団遺伝学的解析を実施し、論文化を目指す。
3)洞窟水圏における動物群集の構造と個体群維持機構:過年度までに調査を実施した3D測量による洞窟地形図作成の解析作業を進め、「1)洞窟水圏性動物の種多様性研究」にて明らかになった種多様性(動物相)情報を元に、各洞窟における動物群集構造に関するデータ解析を実施し、論文化を目指す。
これまでの研究成果を活用し、洞窟水圏生物の保護・保全に向けたアウトリーチ活動を促進させるとともに、国外研究者を招聘したワークショップを実施し、研究者間のさらなる交流・連携を進め、洞窟水圏生物研究のさらなる発展を目指す。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2023 2022

すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (4件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] ドウクツヌマエビの与論島からの初記録2023

    • 著者名/発表者名
      藤田喜久
    • 雑誌名

      Nature of Kagoshima

      巻: 49 ページ: 223-225

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] A new shrimp of the genus Odontozona Holthuis, 1946 (Decapoda: Stenopodidea: Stenopodidae) from a submarine cave of the Ryukyu Islands, Indo-West Pacific2022

    • 著者名/発表者名
      SAITO TOMOMI、FUJITA YOSHIHISA
    • 雑誌名

      Zootaxa

      巻: 5175 ページ: 439~452

    • DOI

      10.11646/zootaxa.5175.4.2

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 与論島初記録のヘリトリオカガニ2022

    • 著者名/発表者名
      藤田喜久
    • 雑誌名

      Nature of Kagoshima

      巻: 49 ページ: 49-51

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 沖永良部島初記録のドウクツベンケイガニ2022

    • 著者名/発表者名
      小林大純・内田晃士・鈴木廣志・藤田喜久
    • 雑誌名

      Cancer

      巻: 31 ページ: 7-10

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] A new species of the genus Eutrichopagurus Komai, 2015 (Crustacea: Decapoda: Anomura: Paguridae) from a submarine cave in the Ryukyu Islands, southwestern Japan2022

    • 著者名/発表者名
      OSAWA MASAYUKI、FUJITA YOSHIHISA
    • 雑誌名

      Zootaxa

      巻: 5214 ページ: 440~450

    • DOI

      10.11646/zootaxa.5214.3.6

    • 査読あり
  • [学会発表] 沖縄島北中部太平洋沿岸域の石灰岩鍾乳洞への海面変動の影響2023

    • 著者名/発表者名
      浦田健作・中井達郎・ 木村颯・藤田喜久
    • 学会等名
      日本地理学会春季学術大会
  • [学会発表] 琉球列島における洞窟性甲殻類の現状2022

    • 著者名/発表者名
      藤田喜久
    • 学会等名
      日本甲殻類学会 第60 回大会
  • [学会発表] 沖縄島の海底洞窟から得られたショウジンガニ科の未記載属未記載種2022

    • 著者名/発表者名
      藤田喜久・成瀬 貫
    • 学会等名
      日本甲殻類学会 第60 回大会
  • [学会発表] マルチカメラシステムを用いた浅海底地形における高解像度SfM写真測量法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      木村颯・藤田喜久・水山克・三納正美・菅浩伸
    • 学会等名
      日本地形学連合2022年秋季大会
  • [図書] 新種発見物語(第8章 探検する生物学・海底洞窟で「新種」に出会う-)2023

    • 著者名/発表者名
      島野智之、脇司 編著 (第8章 著者 藤田喜久)
    • 総ページ数
      270
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      978-4005009664

URL: 

公開日: 2023-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi