研究課題/領域番号 |
20H03322
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
中川 聡 京都大学, 農学研究科, 准教授 (70435832)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 糖鎖 / 共生 / 深海底熱水活動域 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、深海底熱水活動域において強固な共生関係にある生物間(微生物-大型生物や古細菌-古細菌等)の相互作用を、世界で初めて糖鎖生物学の観点から体系化することにある。本研究において、『共生微生物の糖鎖によるタンパク質/脂質の修飾量と組み合わせ(微生物が纏うドレス)が、深海底において生物間の共生を成立させる普遍的分子基盤である』という独自の仮説を検証するため、①超高解像度質量分析技術を用いた糖鎖修飾分子の網羅的同定と構造解析、②糖鎖修飾蛍光ビーズ(人工共生菌)を用いた感染実験による糖鎖の機能解明、を実施し目的を達成する。本研究は、深海底における異種生物間の分子的コミュニケーション手段の研究を通じて、人類に蔓延する病原性微生物の誕生過程の解明、さらには共生(感染)機構を標的とした革新的治療法の開発に益することを目指している。 2021年度は、独自に確立してきたメタゲノム解析とグライコプロテオーム解析の組み合わせ手法だけでなく、ヒドラジン分解法による糖鎖の遊離・精製や部分メチル化分析、核磁気共鳴画像法(NMR)等を駆使し、特に深海底熱水活動域における生物間相互作用に重要であると考えられる糖鎖についてその詳細な構造を解析した。これにより深海(微)生物の生育状態(共生モードおよび単独生活モード)に応じて発現する多様な糖タンパク質や糖鎖を、これまでの研究を圧倒する正確性で同定し、さらにはその機能に関する知見を得ることに成功した。なお、本年度の研究に関連する成果の一部は学会や国際誌等で報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
超高解像度質量分析技術だけでなくヒドラジン分解法による糖鎖の遊離・精製や部分メチル化分析、核磁気共鳴画像法(NMR)等を駆使し、これまでの研究を圧倒する、膨大かつ多様な糖タンパク質(糖ペプチド)を同定し、生物の生育状態に応じた糖鎖構造や修飾パターンに関する知見を得ることに成功している。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は主に共生微生物近縁種の分離培養・ゲノム解析・群集遺伝学的解析等に成功している細胞内共生系を解析対象とする。前年度までに解析対象としていた細胞外共生系と異なり、本共生系において共生微生物は、宿主の細胞内に共生している。このため、共生微生物-宿主間の依存度が比較的高いと考えられるが、共生微生物は宿主体外での増殖能を失ってはいないと考えられている。共生モードにある細胞を分画し、Orbitrap Fusionにより糖鎖とその修飾分子を網羅的に解析する。本装置は前年度までの研究でも用いてきたが、例えばEThcDとsceHCDと呼ばれる手法を組み合わせることにより、1度の分析で千種類を超えるタンパク質(従来法の10倍以上)を網羅的に同定し、結合している糖鎖の構造や結合様式までも定量解析可能な革命的質量分析計である。本研究では分析時間短縮のための工夫として、試料毎に異なる安定同位体で糖鎖・ペプチド・脂質を標識し、複数試料の同時分析を行う予定である。これらは今後細胞内共生系を対象とした種々の解析において基盤的知見となるとともに、深海底熱水活動域に見られる様々な生物間相互作用に通底する機構の体系的理解に向けた重要なステップと位置づけられる。
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