研究課題/領域番号 |
20H03437
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
佐藤 卓也 横浜市立大学, 医学部, 助教 (70599505)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 精子形成 / セルトリ細胞 / オルガノイド / 器官培養 / 多能性幹細胞 / 分化誘導 |
研究実績の概要 |
精巣組織片を用いた器官培養法によって、マウスの精子幹細胞から精子へ至る精子形成過程の全てをin vitroで再現することが可能になった。しかし、マウス個体由来の精巣組織に依存した方法であることが、研究をすすめる上での様々な制限をもたらしている。動物個体から得られる精巣組織を用いることなく、精子形成の“場”である精巣を創り出すため、本研究は、多能性幹細胞からの精巣オルガノイド作製法の開発を目的としている。 セルトリ細胞のレポーターであるAmh-GFP ES細胞に対し、生殖巣の起源である中間中胚葉への分化誘導を行った後、Tet-Onによって種々の転写因子を発現させることで、セルトリ細胞を分化誘導することを試みてきた。転写因子ライブラリーからスクリーニングを行った所、セルトリ細胞の分化誘導に寄与する可能性がある10個の候補遺伝子を特定できた。そこで今年度は、この10個の遺伝子の中でセルトリ細胞の分化誘導に重要な遺伝子を決定するために、様々な組み合わせで遺伝子を導入し分化誘導する実験を行ってきた。しかし、これまでのところ分化誘導効率が上昇するような組み合わせは特定できていない。 一方で、最近、メスの多能性幹細胞から機能的な卵巣体細胞を分化誘導する方法が報告された(Yoshino et al., 2021 Science)。彼らと同じ方法でオスの多能性幹細胞を培養することで、精巣体細胞が分化誘導できるだろうという予想をもとに、新しい方法で精巣体細胞の分化誘導を行うことにした。しかし、実際に実験を行ったところ、精巣体細胞はほとんど誘導できなかった。それらの細胞の遺伝子発現プロファイルを調べたところ、メスの細胞へ分化していることが明らかとなった。そのため、卵巣への分化に機能するシグナル経路を抑制する阻害剤を使った分化誘導法により、精巣体細胞への誘導効率を改善することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画とはことなる手法ではあるが、多能性幹細胞から精巣体細胞を分化誘導する方法を確立することに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
開発した多能性幹細胞からの精巣体細胞の分化誘導法について、今年度中の論文投稿を目指し必要なデータをそろえる予定である。一方で分化誘導効率に関しては、まだ十分とは言えないため、培養条件の検討を今後も継続する計画である。
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