研究課題
diffuse type 胃がんより樹立した胃がんオルガノイドは特徴的な充実型のオルガノイドを形成し、さらにCDH1の遺伝子異常を認める。Duffuse type胃がんには、印環細胞がん(SRCC)と低分化腺がんが含まれるが、臨床胃がんではしばしばこれらの病理組織像が混在している。ライブラリの中で、樹立した7例のSRCCを含む Diffuse type胃がんのオルガノイドは全て増殖にWntを必要とした。各々のニッチ因子を抜いて培養を行ったところ、SRCCが病理像で含まれるオルガノイドでは、WntおよびRspondin(WR)を培養液から除去することにより、SRCC様の形態に変化し、PAS陽性の粘液貯留を認めることが分かった。さらに遺伝子発現解析を行ったところ、SRCC型の細胞は KRT20や MUC2、ATOH1といった分化マーカーの発現が高いのに対し、充実型の細胞はLGR5やAXIN2といった幹細胞マーカーの発現が高いことがわかった。この結果から、臨床上の胃がん病理組織像で観察される低分化腺がんとSRCCの混在は、同一の遺伝学的背景をもつ細胞が分化・脱分化した結果、このような病理像を呈していることが考えられた。原発巣の病理サンプルを検討したところ、粘膜筋板では RSPO3が発現しておりこれに近接した胃がん組織はLGR5を発現し充実型の細胞形態を示し、粘膜筋板から離れた細胞は CK20を発現しSRCCの形態を示しており、この仮説が正しいことが検証された。さらなる検証のため、異種移植モデルによる in vivo の検討を行った。その結果、同様に粘膜筋板に存在するαSMA陽性の線維芽細胞には RSPO3 が発現し、これに近接した細胞はLGR5やAXIN2などの幹細胞マーカーを発現した低分化型腺がんの細胞形態を示し、離れた細胞はCK20を発現したSRCC様の細胞形態を示した。
2: おおむね順調に進展している
現在まで、胃がんオルガノイドも順調に拡充で来ており、解析および検討も順調に進展していると自己評価する。
今回、一定の遺伝学的変化を持つ胃がん細胞が Wnt シグナルの刺激の有無により病理組織像が変化することを明らかにすることができた。今後これらの事象の悪性化機序の寄与の解明を、エピゲノムの解析やゲノム編集などを行い目指す。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件)
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