研究課題
肺胞蛋白症患者への有用性を示したGM-CSF吸入療法は、急性呼吸窮迫症候群(ARDS)や肺非結核性抗酸菌(NTM)症に対しても効果が認められている。しかしその効能メカニズムは不明である。これに対しわれわれは、肺胞マクロファージ(肺胞M)と間質性マクロファージ(間質性M)、に着目した。肺胞Mは、胎児期に生着した前駆細胞が自己複製を繰り返しながら、肺胞腔で肺の恒常性を維持している:サーファクタント量を調整し、絶えず流入してくる外来吸入物質に対して過剰な免疫応答を抑制している。一方、間質性Mは、末梢血単球から分化し、肺の間質に分布する組織マクロファージとして見つかった。間質性Mは炎症惹起性と高い組織再構築能を有し、肺内微小環境の変化によって失われた肺胞Mを置換して、一部肺胞腔内にも分布することがわかってきた。そこで本研究では、GM-CSF吸入療法の効能メカニズムとして「肺胞M/間質性Mのバランス」を取り上げ、ARDSや肺NTM症の新たな治療戦略としてGM-CSF吸入療法の確立を目指す。研究初年度は、カニクイザルにヒトGM-CSFを吸入で投与した前臨床試験の保存検体を用いて、GM-CSFを吸入することによって惹起される宿主免疫応答を探索的に解析した。研究三年度から研究四年度にかけては、GM-CSF吸入の作用機序として注目しているスカベンジャー受容体について、研究二年度にCRISPR-Cas9システムを用いて作製した欠損マウス14系統を繁殖させ、系統樹立の準備を行った。
2: おおむね順調に進展している
今年度は、GM-CSF吸入の作用機序として注目しているスカベンジャー受容体について、昨年度作製した欠損マウス14系統を繁殖させ、系統樹立の準備を行うことができた。
系統樹立のために繁殖させた欠損マウス14系統について、形質変化や繁殖可能性を検討しながら、ARDSモデルや肺非結核性抗酸菌症モデルといった本研究課題に適した欠損マウスの系統を絞り込んでいく。
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