研究課題/領域番号 |
20H03772
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都府立医科大学 |
研究代表者 |
井上 匡美 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (10379232)
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研究分担者 |
井上 正宏 京都大学, 医学研究科, 特定教授 (10342990)
下村 雅律 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (90433268)
伊東 恭子 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80243301)
矢追 毅 京都府立医科大学, 医学(系)研究科(研究院), 助教 (40311914)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 肺癌 / STAS |
研究実績の概要 |
肺癌や転移性肺腫瘍における病理組織所見で気腔内遊離腫瘍細胞として観察されるSpread Through Air Spaces (STAS)は、予後不良因子であり、手術後の局所再発に関連していることが報告されている。そのメカニズムとして、気腔内に浸潤した腫瘍細胞による気道内転移再発が考えられているが、その病態は研究段階にある。本研究ではCancer Tissue-Originated Spheroid (CTOS) 法で調製したオルガノイドを用いたin vitroがん気道転移モデルを確立し、STASのメカニズム解析を行った。気道上皮モデルはNormanらの報告に従って、マウス肺より気道オルガノイドを調製後に2次元培養したものを用い、大腸がん・肺がんオルガノイドとの共培養による接着実験を行った。共焦点顕微鏡により経時的に観察したところ、癌オルガノイドは気道細胞に接着した後、気道細胞間を押し分けるように浸潤し、プレート底面に到達、その後周囲の気道細胞を押しのけながらプレートとの接着面を増加させる現象 (クリアランス)が観察された。一方、気道上皮へのオルガノイドの接着率はtype I collagenと比較して明らかに低かった。オルガノイドは一旦気道上皮に接着しても浸潤しないもの、ECMには到達するが周囲の細胞をクリアランスできないもの、一度浸潤はするが上皮が再結合して脱落するものが観察された。以上の結果から腫瘍細胞塊は気道上皮への接着-浸潤-ECMへの接着―クリアランスの過程を経て、転移が成立すると考えられた。また、気道上皮は腫瘍細胞塊の接着・浸潤に対して防御的に機能している可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
肺癌切除検体からのオルガノイド培養は,大腸癌に比べて成立しにくいことが分かってきたが,転移性肺腫瘍も含めた材料も用いて,かつマウス肺をから気道オルガノイド調整後に共培養することで,蛍光免疫染色法によりin vitroでの癌浸潤転移病態が観察できた.
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今後の研究の推進方策 |
ブレオマイシン暴露による肺線維症マウスモデルを用いて,気道上皮間質の異常がSTASを誘導する可能性について,CTOSオルガノイドを応用して検索する.また,CTOSの性質のひとつにpolarity switchingがあり,浮遊状態ではapical membraneが外向きになるapical-outを示し,in gel(細胞外マトリックスに囲まれた状態)においてapical membraneが内向きになるapical-inを示すことが知られているので,in vitro動物実験系でこのpolarity switchingが癌細胞の進展や接着に関与していないか解析する.
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