研究課題/領域番号 |
20H03827
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山田 満稔 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 講師 (40383864)
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研究分担者 |
金蔵 孝介 東京医科大学, 医学部, 准教授 (10508568)
阿久津 英憲 国立研究開発法人国立成育医療研究センター, 生殖医療研究部, 部長 (50347225)
中村 彰宏 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (50750973)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | iPS細胞 |
研究実績の概要 |
加齢による幹細胞機能の低下に関わる分子経路を解明することを目的とし、若齢(6~8週)、中年(6カ月)、高齢(12~14カ月)、超高齢(24ヶ月)およびあらたに30カ月齢のマウスから、皮膚組織由来のiPSC株を樹立した。幹細胞特性の検証のために行った未分化能および多分化能性試験において、すべての多能性幹細胞株は免疫組織染色および定量的リアルタイムPCR(qPCR)法により未分化能性および多分化能性が一様に証明された。 グローバルな遺伝子発現の違いを解析するために行ったRNAシークエンス(RNA-seq)解析の結果、若齢マウス由来ESCと比較して加齢マウス由来のiPSCでは防御やサイトカイン反応に関わる遺伝子の発現量が増加した。p-valueを考慮せず、Fold change>2.0, <-2.0のみで抽出した遺伝子を対象に再度GO term解析を行った結果、減数分裂におけるDNA修復合成、piRNA合成経路、配偶子DNAメチル化などの発現が上昇していた。さらに幹細胞における代謝経路に関わる遺伝子群を対象にpathyway解析を行ったところ、核酸合成経路および脂質代謝に関わる遺伝子群の発現上昇およびエネルギー代謝経路の低下が観察された。 これらを踏まえて、グローバルな代謝状態を解析するためメタボローム解析を行ったところ、これまでのpreliminaryな結果からは、加齢や幹細胞の違いよりも、培養によるbiasが大きいということが問題点として指摘された。今後は培養から回収に至る条件を厳密に定めた上で、あらたに樹立した30カ月齢のiPS細胞を対象に追加解析を行う。 ここまでの研究では、多能性幹細胞における転写と代謝の加齢依存性を明らかにした。今回のデータは、より質の高いiPSCの開発につながる可能性があり、再生医療にとって望ましいものと考える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
30カ月齢の個体から加齢モデルとしての細胞ソースが樹立されたことに加えて、当初予定していたmetabolome解析およびRNA-seq解析からpathway解析を加えることができたため、研究計画はおおむね順調に進展していると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
RNA-seq解析の結果、発現量の異なる遺伝子群を抽出した。これまでのところ、加齢によるゲノム安定性や代謝に関する明確な違いが捉えられていないものの、代償性に遺伝子群が働いている可能性が考えられる。そこで次年度は、これら遺伝子に対する機能抑制実験としてshRNAを導入し、ゲノム安定性および代謝に関する影響を検討する。さらにここで有意な変化が観察された場合には、成育医療センターより供与されたヒトiPS細胞株を用いて同様の解析を行い、加齢によるiPS細胞への影響と救済方法を模索する。
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