研究課題
本研究事業の主体となる「げんき発見ドック」を令和4年8月、9月と令和5年2月に実施した(参加者108名)。また、令和2年10月に実施した「げんき発見ドック」の参加者については介入後1年6か月後調査を令和4年5月に実施した。参加者はCOVID-19による感染拡大の影響もあり介入前調査参加者232名のうち95名(41%)が参加した。令和2年10月と令和4年5月の比較では、オーラルフレイルの判定項目の該当数に関して、25名(26.9%)が改善し、51名(54.8%)が維持、17名(18.3%)が悪化した。また、オーラルフレイルの判定については介入前に該当していた者は7名であったが、そのうち4名(57.1%)は回復しており、口腔機能向上・栄養改善プログラムによる改善効果が認められた。令和2年度の横断調査データに関するCOVID-19に関連したストレス、運動習慣と口腔関連QOLとの関連についての成果はScientific Reports誌(Miura K,2022)に、オーラルフレイルと口腔カンジダ(C.albicansとC.glabrata)の保菌状態との関連についての成果はGerodontology誌(Baba H,2022)にそれぞれ掲載された。本年度は新たに、オーラルフレイルと関節リウマチなどとの関連が報告されているPrevotella属との関連を検討したところ、有意な関連が認められ、口腔内細菌叢とリウマチ等関節疾患やサルコペニアとの関連が示唆された。歯科衛生士、管理栄養士による口腔機能向上・栄養改善プログラムと食事栄養指導(月1回の通いの場における集団および個別指導と、自宅でのセルフプログラム)については、自宅でのセルフプログラムと郵送によるプログラム実施状況の確認とフィードバックを継続し、令和2年度および令和4年度参加者の介入前後の比較分析を行っている。
2: おおむね順調に進展している
本年度「げんき発見ドック」に関しては、COVID-19の感染拡大下ではあったが、参加人数を絞って介入前後調査、口腔機能向上・栄養改善プログラムとも実施できた。令和2年度の参加者に対しても、オンラインと対面で口腔機能向上・栄養改善プログラムを継続し、介入後1年6か月後調査を実施できた。令和3年度はCOVID-19の感染拡大によって新規参加者に対する調査が実施できず、当初予定した参加人数を満たしていないが、令和2年度と令和4年度参加者の介入前後の調査において有意な結果が得られたことから、当初の目的を達成する可能性は十分と考える。研究成果についても、すでに2本の論文が海外誌で公開され、公開後1年に満たないが4論文で引用されている。また、2論文の投稿準備を行っている。口腔機能向上・栄養改善プログラムと食事栄養指導については、通いの場が自粛となっていることから、保健センターにおいて対面およびオンラインでのプログラムを月1回開催し、介入効果の検証も行うことができた。当初は対面のみのプログラムを想定していたが、本年度実施した感染予防に配慮したオンラインでのプログラムは、外出困難者に対しても適用可能であり、今後のフレイル対策や介護予防事業にも適用できると思われることから、今後もオンラインでのプログラムは継続していく予定である。口腔機能向上・栄養改善プログラムと食事栄養指導のマニュアルの改訂については、オーラルフレイル悪化者および新規発生者と維持・改善者との比較を行い、プログラムの改訂を行う予定である。現時点ではプログラムへの参加回数が影響している可能性が示唆されており、詳細な分析を進めるとともに、参加を促す方策として前日の連絡、家族との連携等で参加率の向上を促している。以上のように本研究事業の目的に沿った成果を上げるべく、適宜研究内容、方法を修正し、研究を遂行してきた。
本研究事業の主体である「げんき発見ドック」については、令和5年度新規参加者を募集して、令和5年9月にベースライン調査を実施し、歯科衛生士、管理栄養士による口腔機能向上・栄養改善プログラムと食事栄養指導(月1回の通いの場における集団および個別指導と、自宅でのセルフプログラム)を6カ月間実施し、介入後調査を令和6年2月に実施する。また、令和2年度および令和4年度調査参加者に対しても継続して事後評価を行い、プログラムの長期効果と転帰(疾病の新規発症、介護認定、入院、死亡など)について検証していく。また本年度はマニュアル改訂に資する根拠を得る目的で、オーラルフレイルと食事栄養摂取との関係、食事栄養摂取と口腔細菌叢との関連を検討する。他にCOVID-19の影響から回復していく過程を通いの場における指導やプログラムの効果とともに検証するとともに、オンラインでのプログラムの効果も並行して検証する。それぞれのプログラムの効果を比較検討するとともに、各プログラムの長所や短所、実施における注意点等を、対象者やプログラム指導者へのアンケートやヒアリングで明らかにするとともに、マニュアルに反映させる。口腔内細菌叢とオーラルフレイルとの関連については、引き続き縦断的に検討していく、特にフレイルやサルコペニア、糖尿病、高血圧症など生活習慣との関連に注目し、それら疾患のバイオマーカーとなる細菌を検索する。口腔内細菌叢については、個人内での再現性や変化、その関連因子についても検討を行っていく。市販の弁当や総菜の活用や欠食の状況別の栄養指導チャート案については、引き続き栄養改善プログラムで使用しその効果を検証する。外食、内食、中食等の比率の変遷についても引き続き調査し、栄養、身体組成、機能への影響についても検討し、プログラムやマニュアルの改訂に反映させていく。
すべて 2023 2022
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件、 オープンアクセス 3件)
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