研究課題/領域番号 |
20H03899
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
渡邊 裕 北海道大学, 歯学研究院, 准教授 (30297361)
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研究分担者 |
飯島 勝矢 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (00334384)
小原 由紀 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 専門副部長 (00599037)
平野 浩彦 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 研究部長 (10271561)
池邉 一典 大阪大学, 歯学研究科, 教授 (70273696)
岩崎 正則 地方独立行政法人東京都健康長寿医療センター(東京都健康長寿医療センター研究所), 東京都健康長寿医療センター研究所, 専門副部長 (80584614)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | オーラルフレイル / コホート統合研究 / 高齢者 / 保健事業 / 介護予防 |
研究実績の概要 |
①オーラルフレイルの有病率と低栄養、要介護等の発生要因に関する調査 2021年度は2020年度に行われた口腔機能に関連する大規模長期コホート研究(板橋)、後期高齢者歯科健診(神奈川県、鳥取県)のデータを2018年、2019年のデータと統合した。2021年度は草津、高島平の調査と、介入研究(岩見沢)はCOVID-19のため実施できなかった。2018年から2020年までに実施された、板橋、草津、高島平、柏の統合データを用いて、地域在住の日本人高齢者5,083人の舌圧の年齢別および性別別の人口基準値を算出した。結果、男女ともに、高齢になるほど舌圧は有意に減少した。年齢と性別の相互作用は、舌圧に有意な影響を及ぼしていることが明らかになった。これについては論文化し公開した。オーラルフレイルと医療費との関連については、2190名の後期高齢者歯科検診のデータと国保データベースを統合し分析した。結果、オーラルフレイルは医科の年間外来医療費が高額であることと有意な関連を認めた。同様に歯科の年間外来医療費とオーラルフレイルにも有意な関連を認めた。オーラルフレイルの各検査項目と医療費との関連については,客観的咀嚼能力の低下と医科の年間外来医療費が高額であることと有意な関連を認めた。 ②地域包括ケアシステムにおける住民主体の通いの場と歯科診療所との共同によるオーラルフレイル予防のための地域介入研究、③オーラルフレイル改善プログラムの効果検証 令和2年度と同様に海老名市では歯科診療所において、岩見沢市では通いの場においてオーラルフレイル改善プログラムを実施する予定であったが、岩見沢市では通いの場がCOVID-19によって自粛となり、自宅でのセルフプログラムでの実施となった。海老名市では予定通りオーラルフレイル改善プログラムを実施し、効果について国保データベースと統合し分析している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
COVID-19の感染拡大により大規模長期コホート研究のうち、草津、高島平の追跡調査は中止となった。しかし、2018、2019、2020年の既存データの統合解析作業は順調に進んでおり、本年度は舌圧の年齢別および性別別の人口基準値を論文化し公開することができた。北海道岩見沢市で実施する予定であった通いの場におけるオーラルフレイル改善プログラムについては、通いの場が自粛となったことから、通いの場におけるプログラムの効果検証はできなくなった。代わりに自宅でのセルフプログラムと郵送によるプログラム実施状況の確認、フィードバックを実施し、効果検証を行っている。事後評価については、COVID-19の感染の再拡大により2021年度中は実施できなかった。事後評価は2022年5月に実施する予定となっている。通いの場におけるオーラルフレイル改善プログラムの効果検証については、COVID-19の感染が収束次第開始できるように、保健事業と介護予防の一体的実施にかかる、市の保健師と地域の歯科診療所の歯科医師、歯科衛生士と協議しながら準備を行っている。歯科診療所におけるオーラルフレイル改善プログラムの効果検証については、先行して行ったオーラルフレイル改善プログラムの効果に関するクラスター無作為化比較試験の結果についての論文が国際誌に採用され公開された(Gerontology. 2021 Jul 9:1-10.)。オーラルフレイル改善プログラムの普及を目的とした海老名市の介入研究については、対象者数は少なくなったが、2021年も予定通り介入が終了し、現在国保データベースと統合し効果の検証を行っている。 本研究事業のいくつかの対象地域においてCOVID-19の感染状況はいまだ予断できない状況であるが、本研究の目的に沿った成果を上げるべく、研究内容、方法を適宜修正し、試行錯誤しながら研究を遂行している。
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今後の研究の推進方策 |
①オーラルフレイルの有病率と低栄養、要介護等の発生要因に関する調査:2018、2019、2020年の口腔機能に関連する大規模長期コホート研究(柏、草津、高島平、板橋、SONIC研究)、後期高齢者歯科健診(神奈川県、鳥取県)、介入調査(岩見沢、海老名)のデータに2021年データを統合し、オーラルフレイルおよび口腔機能低下症について縦断的に検討し、フレイル、各種疾患、要介護、死亡等の発生や重度化とオーラルフレイルとの関係を検討する。また、医療費との関連を縦断的に検討し、オーラルフレイルが全身の健康に与える影響について検討する。 ②地域包括ケアシステムにおける住民主体の通いの場と歯科診療所との共同によるオーラルフレイル予防のための地域介入研究:2020、2021年度と同様に海老名市と岩見沢市の歯科診療所において後期高齢者歯科健診受診者のうち、オーラルフレイル該当者に対してオーラルフレイル改善プログラムを実施する。2020、2021年度とも通いの場等が自粛となったが、状況が落ち着き次第、プログラム修了後受講者に対して住民主体の通いの場での口腔機能向上にかかる活動を促すとともに支援する。通いの場での活動は市の保健師、歯科診療所の歯科医師、歯科衛生士も共同で支援し、地域包括ケアシステムと地域の歯科診療所の共同のモデルと位置づけその効果を検証する。 ③オーラルフレイル改善プログラムの効果検証:2021年に予定していたがCOVID-19の感染拡大により中止となったオーラルフレイル改善プログラムの歯科医院版と地域包括ケア版に関する研修会を実施する。後期高齢者歯科健診を受診し、オーラルフレイル、口腔機能低下症に該当した者で、参加の同意が得られた対象者に事前評価を行い、無作為に介入群と対照群の2群に分け、オーラルフレイル改善プログラムの効果を検証し、口腔健康管理の在り方を検討する。
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