研究課題
2022年度は、COVID-19の影響で遅れていた協力医療施設での臨床研究に着手する予定であったが、所属施設の教育・研究活動への影響や、協力施設の環境の変化等により、結果的には実践的な研究は進まず、2023年に向けた準備が主となった。第43回日本静脈学会における深部静脈血栓症予防のための看護に関するシンポジウム、第13回日本看護評価学会における患者安全から見た深部静脈血栓症予防看護に関するシンポジウム、第5回日本フットケア学会九州山口・地方会における血管看護におけるEBP、それぞれの会の企画、演者の依頼、講演を行い、看護師を対象とした啓発活動を行った。また、第7回日本血管看護研究会の大会長を務め、自身が併せて取り組んでいるグラフィックレコーディングを患者説明や患者の意思決定などの保健医療福祉における活用可能性について示し、第43回日本看護科学学会学術集会においては、グラフィックレコーディングが学修活動にもたらす影響の理論的背景について示した。本研究の最終目的には、いずれもつながっており、携帯型超音波診断装置を用いて、患者の生活場所で、対象の観察をすること、すなわち看護エコーの適用をすすめる準備となった。携帯型超音波診断装置の実践的なトレーニングや教材作成を研究分担者内で行った。このトレーニングの難易度はそれほど高くなく、脈管の解剖、静脈血栓症リスクについての知識が基盤として重要であり、トレーニングプログラムは、経験の浅い看護師や看護基礎教育における看護学生を想定して開発にあたった。
3: やや遅れている
看護エコーとして、協力医療施設で教育・訓練・実施するにあたっては、POCUS-DVTのDVT予防やPEによる死亡の回避効果に対する看護師の業務負担という観点では導入が困難であることがわかった。臨床的な意義に対する費用対効果や職種による実務範囲(Scope of Practice)についての議論が十分でないことが要因である。看護師によるPOCUSの実証的研究に進む前に、看護師に広く深部静脈血栓症予防看護の必要性を伝える方策をあらためて検討した。また、携帯型超音波診断装置の実践的なトレーニングや教材作成は、協力医療施設ではなく、研究分担者内で行うことにとどまった。このトレーニングの内容は、難易度が高くなく、経験の浅い看護師や看護学生でも利用できるプログラム開発という点で、丁寧な過程をとることにつながった。
携帯型超音波診断装置購の購入により、より身近に演習・実習することが可能となった。看護師だけでなく看護学生に対象を拡大し、看護エコーとして臨床看護並びに看護基礎教育への活用可能性も併せて検討する予定である。深部静脈血栓症予防に関するエコー観察の対象は深部静脈であり、エコーの技術として比較的難易度が高い。看護エコーとして、体表、表在静脈の観察をトレーニングに加えることで、看護エコーの敷居を下げ、観察対象を深部静脈や血栓だけでない対象に拡大することで間口を拡げる必要があると考えらえた。既に日本看護理工学会より示されている「末梢静脈カテーテル留置技術ベストプラクティス」に基づき、より身近な技術である、末梢静脈の観察、マッピングから導入するトレーニングプログラムを再構築し、深部静脈を観察する簡易法を検討する。最終的には、患者のQOLや看護の安全、看護の質の向上、深部静脈血栓症予防と早期発見におけるPOCUSの優位性を示す実証的研究に移行する予定である。
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西南女学院大学紀要
巻: 27 ページ: 133-142
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