研究実績の概要 |
本研究は,地域虚弱高齢者のSuccessful Agingを支える地域課題を分析することを目的としている.2020年度は地域虚弱高齢者に関連する地域課題を明らかにするための健康指標として,医療費利用と介護費利用に着目して解析を実施した.具体的には,調査地域とした3自治体に居住する虚弱高齢者約1600名を対象に,2012年から2017年までの医療費利用と介護費利用の関連について,予備的に解析を実施した.その結果,調査対象とした自治体によって若干の違いはみられたものの,3自治体とも医療費利用と介護費利用の間に緩やかな負の相関(-0.1033)がみとめられた.全期間の医療費全体を従属変数とした多変量回帰分析では,要介護度が有意に関連していた(要支援1:coefficient=0.22,95%信頼区間=-0.01~0.45, 要支援2:coefficient=0.34, 95%信頼区間=-0.11~0.58,要介護1:coefficient=0.32, 95%信頼区間=-0.08~0.57, 要介護2:coefficient=0.29, 95%信頼区間=-0.04~0.61).一方,全期間の介護費全体を従属変数とした多変量回帰分析を実施したところ,課税世帯であること(coefficient=0.33, 95%信頼区間=0.01~0.64),単身世帯であること(coefficient=0.67, 95%信頼区間=0.25~1.00)が有意に関連していた.介護保険料区分別に医療費利用金額を検討したところ,保険料区分が高いほど医療費が高くなる傾向がみられた.同様に,介護保険料区分別に介護費利用金額を検討した結果,もっとも低い介護保険料区分段階の者の介護費が他の区分段階の者より,突出して高いことが明らかになった.
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