研究課題
本研究は、骨格筋や腱の機能的特性(スティフネス等)を規定する遺伝要因が、肉離れの受傷しやすさに影響しているという仮説を検証することにより、「肉離れに対する遺伝的リスクの予測に必要な遺伝情報を同定すること」および「個人のリスクに合わせた肉離れ予防策構築のための学術的基盤を創出すること」を目的としている。令和4年度は、これまでに明らかとなった骨格筋のスティフネスと関連する2つの遺伝子座(rs12807854, rs78405694)がアスリートの肉離れ受傷と関連するか否かについて検討を行った。具体的には、合計1,428名のアスリート(陸上競技選手、サッカー選手)を対象として、スポーツ外傷障害既往歴(医師の診断のある肉離れの受傷歴の有無)を調査した。また、唾液より抽出した総DNAを用い、骨格筋のスティフネスと関連する2つの遺伝子多型(rs12807854, rs78405694)をTaqMan法を用いて解析した。2つの遺伝子多型の遺伝型と肉離れ受傷歴の有無の関連性を検討した結果、いずれの遺伝子多型においても、骨格筋スティフネスが高い(筋が硬い)ことと関連する遺伝型を有するアスリートで、肉離れ受傷歴を有す割合が高かった。さらに、これらの遺伝子多型を元に筋スティフネス関連遺伝型スコアを算出すると、遺伝型スコアと肉離れの受傷歴には有意な関連性が認められた。遺伝型スコアが高い(筋スティフネスが高いと予測される)アスリートほど、肉離れ受傷歴を有する割合が高かった(P = 0.0249, Odds ratio: 1.45, 95% CI: 1.06-2.00)。以上のことから、骨格筋のスティフネスと関連する遺伝子多型は、アスリートの肉離れ受傷リスクにも関与していることが示された。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通りにおおむね進展しているため。
今後は、これまでにアスリートの肉離れ受傷との関連が横断的な検討により確認された遺伝子多型および遺伝型スコアについて、肉離れ受傷との関連を縦断的に検討し、肉離れに対する遺伝的リスクの予測が可能か否かについて明らかにする。さらに、環境要因と遺伝要因の相互作用についても検討を行う。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件)
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