研究課題/領域番号 |
20H04082
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
吉原 利典 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 助教 (20722888)
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研究分担者 |
内藤 久士 順天堂大学, 大学院スポーツ健康科学研究科, 教授 (70188861)
町田 修一 順天堂大学, 大学院スポーツ健康科学研究科, 教授 (40421226)
柿木 亮 順天堂大学, スポーツ健康科学部, 非常勤助教 (70614931)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | アンジオテンシンII1型受容体 / 性差 / トレーナビリティ / 骨格筋 |
研究実績の概要 |
男女の生物学的な違いは運動効果の獲得や筋萎縮の生じやすさに多大な影響を与え、女性アスリートの競技力向上や高齢男性の加齢による筋肉減少(サルコペニア)に深刻な悪影響をもたらす。これまで申請者らは、骨格筋適応に性差が生じる原因の解明に取り組み、雌性ラットでは単回のレジスタンス運動や筋萎縮に対して骨格筋量を負に調節する因子の活性化が生じやすいという証拠を得たが、制御メカニズムの特定には至らなかった。本研究では、アンジオテンシンII 1型受容体(AT1R)の性別特異的な発現や運動に対する応答が、女性の肥大しにくく、萎縮しやすいという応答を司っているとの仮説について、筋線維内にAT1Rを特異的に発現誘導・阻害することにより、AT1Rが骨格筋適応の性差に果たす役割を明らかにすることを目的とする。2020年度は、女性で筋肥大が生じにくい根本的な原因を解明するために、AT1Rの性別特異的な発現や運動に対する応答の違いに着目し、ラットを用いた基礎的研究により検討を行った。具体的には、雌雄のラットそれぞれに動物用トルク発生装置を用いた筋電気刺激やダウンヒルランニングによりレジスタンス運動を模擬した筋収縮を行わせ、その応答の性差を比較した。その結果、各セットのピークトルクの変化には、性差が認められたが交互作用は認められなかった。しかし、ピークトルクの低下率は雄と比較して雌で有意に高値を示した。また、タンパク質の合成に関わるmTOR系のシグナル伝達物質の活性化状態を評価したところ、筋電気刺激に対するタンパク質合成の活性化は雄と雌で性差はなく同等に生じていることが確認された。また、2021年度には女性で筋が萎縮しやすい原因の解明および対抗策の開発を目指し、AT1Rの阻害剤を用いて筋萎縮の抑制効果を雌雄で比較した。阻害剤投与は雌ラットにのみ萎縮抑制効果を発揮するという性別特異性が認められた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020および2021年度は、女性の肥大しにくく、萎縮しやすい原因を探るために、雌雄それぞれのラットに同等の運動刺激および不活動刺激を負荷した。実験は筋サンプリングおよび一部の解析が終了しており、計画通りに実験が進められていると考えられる。また、筋萎縮モデルおよび老化モデルラットの飼育、サンプリング解析はある程度終了しており、そちらは計画以上に進められている。以上のことから、当該年度の実施計画についてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、女性で筋が萎縮しやすい根本的な原因を解明する。具体的には、受容体特的な阻害剤の投与および遺伝子導入法により雌性ラットのAT1Rを阻害あるいは発現低下させ、活性酸素種の産生やタンパク質分解系(遺伝子・タンパク質解析)の活性化に与える影響を明らかにする。また、加齢によって生じるAT1Rの性別特異的な変化やAT1Rの阻害がサルコペニアの進行に及ぼす影響について明らかにしていく。さらに、骨格筋の退行的進化に伴うAT1R発現の変化を調節する機構について、環境要因による遺伝子発現調節筋機構(エピジェネティクス)の変化(マイクロRNA、ヒストン修飾等)について詳細な検討を行う。
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