研究実績の概要 |
2022年度はモジュール仮説の枠組み(筋シナジーや関節モジュール)に基づき、身体動作の個人差(Takiyama+, Front in Sports and Act Liv, 2022)、関節モジュールの運動適応に伴う変化(Inout+, 2022, PLoS One)を明らかにした。これまでモジュール仮説の枠組みは手法の制限により、筋肉の種類ないしは関節の種類(空間要素)と時間変動(時間要素)の2要因の議論にとどまっていたものの、テンソル分解を利用することにより時空間要素の個人差と運動適応による変容を議論できることを示した。特に、これまでモジュール仮説において重要であると考えられているモジュールは、課題の情報を必ずしも反映しないことが報告されており、モジュールと動作の結果との関係性は明らかでなかった。研究代表者は、解析的にモジュールと動作の結果との関係性を明らかにして、この未解決問題に対する答えを導いた。
一方、モジュール仮説と対をなす運動制御における仮説である課題関連成分仮説に基づき、熟練者、素人、イップスになり計画した動作をこなせない患者の違いを明らかにした(Takiyama+, Front in Neurol, 2022)。この研究ではピアノ演奏動作を対象としており、対象としたピアノ演奏動作ではモジュールはグループ間の差を反映しないことが判明し、一方で課題関連成分には反映されていることも判明した。つまり、ピアノ演奏技術のスキルはモジュールではなく課題関連成分に反映されていることがわかった。
上記の結果、スキルの差を反映する個人差、運動適応、素人と熟練者の差を反映する動作成分はモジュールもしくは課題関連成分に反映されることを示した。しかしながら、未だ課題に依存した手法を選択せざるを得ず、統一的に運動制御と運動学習を議論できる枠組みを提案することを目指す。
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