研究課題/領域番号 |
20H04091
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
牛山 潤一 慶應義塾大学, 環境情報学部(藤沢), 准教授 (60407137)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 脳波 / 筋電図 / コヒーレンス / 感覚運動統合 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,脳-身体システムが運動を構成する多様なパラメーターの兼ね合い(=運動の『文脈』)に身体運動を適応させているのか,その情報処理過程の生理学的機序を,脳波と筋電図の相関を評価する「皮質-筋コヒーレンス(CMC)」と呼ばれる生理学的指標を駆使してあきらかにすることである.2021年度は・依然として続くコロナ禍においても,研究室の利用ルールを徹底しながら,安全かつ着実に実験・解析を進めてきた.主には,制御対象の視覚情報の消失(突然見えなくる)や勘違い(重さや触感が見た目とは異なる)に対する柔軟な感覚運動再校正を検討するための実験系の構築に多くの時間を割いた.計算論的神経科学でもちいられる視覚外乱のパラダイムを参考にしつつ,(1)与えられる視覚フィードバックは同じであるにも関わらず,実際に要求される収縮強度が異なる条件;(2)与えられる視覚フィードバックが異なるにも関わらず,実際に要求される収縮強度は同じ条件,など視覚環境が突然変化する実験系を構築し,これにどのように適応するかといった運動のオンライン制御,外乱直後の課題にその影響がどのように反映されるかといった運動のオフライン制御を検討するパラダイムを実装した.また,これまでは運動関連領域の脳波に限定して検討を行ってきたが,本課題では視覚関連領野の脳波情報も非常に重要になるため,CMCだけでなく脳領域間のインタラクション評価も視野に入れている.全頭脳波計測を実現するための準備もおこない,これを実験系に組み込むことにも成功した.これらの成果により,公募調書に設定した「(研究3)視覚フィードバックの差異がもたらす影響」について研究を加速させる準備が整った.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
コロナ禍に入り2年目ということで,研究遂行上の取り決めも充実し,ほぼ従来通りのスピード感で研究を推進することができた.研究計画の本筋の部分では実験系の構築に多くの時間を要したが,2020年度にあげた成果について,学会での招待講演(牛山,第29回日本運動生理学会シンポジウム⑤)や論文としての成果公表(Sugino & Ushiyama, Frontiers in Sports and Active Living 2021; Alkaff & Ushiyama, bioRxiv 2021)にもつながった.上述のとおり,(研究3)について具体的な成果にまでは至っていないものの,当初計画からこの部分の実験系の構築には相応の時間と労力を費やすつもりであり,探索的な活動を通して段階的に着実に予備データの収集は進んでいる.総じて,当初の計画以上に進展していると評価できる.
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は,2021年度に積み上げた準備をもとに,公募調書に記載の「(研究3)視覚フィードバックの差異がもたらす影響」について本実験へと移行する.運動のオンライン修正・オフライン修正の双方に着目した実験パラダイム,かつ全頭脳波計測を含めた重厚な計測を積み上げ,実験を加速させる.また,2022年6月にはInternational Society of Electrophysiology and Kinesiologyにて招待講演が予定されている(https://isek.org/speakers/).本研究計画から得られたデータを中心に,世界の神経生理学者に向けて,脳波・筋電図同時計測が拓くヒト運動制御研究の未来を発信していきたい.
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