研究課題/領域番号 |
20H04227
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
遠藤 孝浩 京都大学, 工学研究科, 准教授 (70432185)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 触力覚 / 触感覚向上 / 確率共鳴 / 技能訓練 / バーチャルリアリティ |
研究実績の概要 |
触診手技をはじめ、手指を動かし対象を触ることでそれを知覚する能動触を行う技能は多い。ここで手指の触知覚能力の向上は、能動触の効果を大いに高める可能性がある。本研究の目的は、確率共鳴現象を応用し、能動触時における複数指先の触感覚向上機能を実現することである。そしてその触感覚向上機能を利用し、学習者が訓練支援用の触覚情報を感度良く得ることができるVR触診訓練システムを構築することである。特に本年度は、複数指先における指先感度を向上する、帯域幅を考慮したノイズ提示法の検討、および、触感覚向上機能を有するVR触診訓練システムの実現に向けた、受動訓練法の研究を行った。 本研究における確率共鳴現象を用いた指先触知覚向上では、指先から離れたノイズ提示部に、機械的ノイズを与える。このノイズが指先における外部からの刺激に重畳し、その刺激を感度良く検知できる。一方、タスクによって指先で使用する機械受容器は異なり、タスクに寄与する機械受容器のみを活性化するノイズ帯域をもったノイズを用いることで、確率共鳴の効果が高められることを、前年度明らかにした。この知見を、複数指を用いたタスクに応用した。特にしこり検知の触診への応用を目指し、簡単なプラスチック製しこりを、皮膚を模したシリコン下に配置し、それを指で検知するタスクを検討した。この際、しこりによって指に発生する振動の周波数は異なる。特定のしこりを検知するのに寄与する受容器のみを選択的に活性化するノイズ帯域幅を解明し、複数指を用いたしこりの高検出化機能法を提案し、その有効性を実験により検討した。また、医学用触診訓練モデルとハプティックインタフェースを用い、しこり感および訓練支援用力情報を提示可能なVR訓練システムの構築を目指した。特に訓練法として、前述の指先触知覚向上機能を有しつつ、訓練者が目標の指先力を提示できるように誘導する訓練法を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、(1)複数指先における能動触感覚向上機能の構成法、(2)指先における2つの力の差(力の変化)に対する能動触感覚向上機能の構成法、(3)触感覚向上機能を有するVR触診訓練システムの検証について研究開発を行い、これらを通して、研究目的の達成を目指している。交付申請書における本年度の目標は、(1)と(2)に関する、複数指先を用いた帯域幅を考慮したノイズ提示法の解明、また(3)に関する、受動訓練法の研究を行うことであった。現在までの各項に対する進捗は、以下の通りである。複数指先を用いた帯域幅を考慮したノイズ提示法の解明に関しては、簡単なプラスチック製のしこりのようなものを、皮膚を模したシリコンの下に配置し、各しこりとその検知に特化したノイズ帯域幅の解明をおこなった。さらにこの結果に基づき、複数指を用いたしこりの高検出化機能法の提案、および実験による検討を行った。また受動訓練法に関しては、前年度に引き続き、医学用触診訓練モデルとハプティックインタフェースを用い、しこり感および訓練支援用力情報を提示可能なVR訓練システムの構築を目指した。特に、前述の指先触知覚向上機能を有しつつ、訓練者が目標の指先力を提示できるように誘導する訓練法を検討した。このように、現在までの進捗状況は、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策として、触診モデルを対象に、複数指先を用いたしこりの有無を高検出できる触感覚向上機能の実現、さらにVR触診訓練に関する訓練法の検討を行う。
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