研究課題/領域番号 |
20H04242
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田村 武幸 京都大学, 化学研究所, 准教授 (00437261)
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研究分担者 |
高坂 智之 山口大学, 大学研究推進機構, 准教授 (70500453)
遠里 由佳子 立命館大学, 情報理工学部, 教授 (80346171)
武藤 愛 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, 訪問研究員 (80730506)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 有用物質生産 / 微生物 / 遺伝子削除 / 増殖連動生産 / 代謝ネットワーク / ゲノムスケールモデル / アルゴリズム / 混合整数線形計画法 |
研究実績の概要 |
ゲノムスケールの制約モデルの代謝ネットワークにおいて、目的化合物の増殖連動生産を達成する遺伝子削除戦略を計算するアルゴリズムであるgDel_minRNとTrimGdelを開発した。代謝ネットワークにおける化学反応は、遺伝子の情報に基づき生成されたタンパク質に触媒される。この遺伝子、タンパク質、反応の関係はGPRルールと呼ばれる。gDel_minRNでは、GPRルールに基づき、増殖連動生産を達成する遺伝子削除戦略のうち、元のネットワークにおいて使えなくなる反応数が最大のものが選ばれる。大腸菌や酵母のゲノムスケールモデルの制約モデルのiML1515やiMM904を用いた計算機実験を行い、gDel_minRNが他手法に比べて、増殖連動生産を達成する遺伝子削除戦略を計算できる成功率が高いことを示した。gDel_minRNに関する研究成果はJournal of Computational Biology誌に採択された。gDel_minRNは増殖連動生産に必要なコア部分を抽出するので、多くの遺伝子削除を必要とする。しかし現在の代謝工学では遺伝子削除数が少ない方が実用的である。そこでTrimGdelは、gDel_minRNで計算した遺伝子削除戦略を起点として、徐々に遺伝子削除数を減らしていく。gDel_minRNによる遺伝子削除戦略で得られた細胞増殖率と目的物質生産率を下回らないという条件下で、削除されている遺伝子を貪欲法を用いてひとつずつ復活させていく。iML1515やiMM904を用いた計算機実験の結果、TrimGdelは他手法と比べて増殖連動生産を達成する遺伝子削除戦略を計算できる成功率が非常に高かった。TrimGdelに関する研究成果はIEEE/ACM Transactions on Computational Biology and Bioinformatics誌に採択された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和4年度までに計画していた反応削除問題や遺伝子削除問題へのアルゴリズムの開発が完了しているので、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
実際の微生物による有用物質生産では、計算機シミュレーションで増殖連動生産する菌株を設計した後に、生物実験により検証する必要がある。目的物質の多くは、微生物の自然状態では生産されないため、遺伝子削除戦略の計算が必要になる。しかし、ゲノムスケールで多くの遺伝子削除が必要な場合、計算量が大きいため、十分な計算機資源とそれを利用するための知識がないと、多くの代謝物について遺伝子削除戦略に関する情報を得ることができない。このような情報を集めたデータベースがあれば便利だが、そのようなデータベースの開発は、計算量の多さや置換可能な遺伝子の存在により、一筋縄ではいかない。そこで本研究では、最小・最大遺伝子削除戦略の効率的な列挙方法を開発して、WebベースのデータベースシステムMetNetCompを開発する。またMetNetCompデータベースを用いて、代謝ネットワークと増殖連動生産の関係の解析を行い、機械学習に基づいて増殖連動生産のための遺伝子削除戦略を予測する手法を開発する。また遺伝子の追加を許す問題についても研究を継続する。
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