研究課題/領域番号 |
20H04368
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松本 謙一郎 北海道大学, 工学研究院, 教授 (80360642)
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研究分担者 |
大井 俊彦 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (40223713)
冨田 宏矢 北海道大学, 工学研究院, 助教 (00814229)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | バイオベースプラスチック |
研究実績の概要 |
本研究課題は、微生物産生ポリエステルであり生分解性プラスチックとして利用できるポリヒドロキシアルカン酸(PHA)の構造制御に関するものである。PHAの構造制御は、材料物性に直結する重要な技術課題である。PHAは、通常共重合体の合成においてはランダム共重合体しか作ることができないが、申請者はブロック共重合体を合成できる方法を独自に見出している。この合成手法を応用することで、非天然モノマーであるグリコール酸を含むポリマーを得ることができた。得られた共重合体は、同一分子内にランダム共重合体と単独重合体の構造を有する、特殊な配列構造を有していた。ランダム共重合体部分のグリコール酸分率は推定約70モル%に達し。本結果は、これまで全く例のない特殊な構造を持つPHAの合成を可能にするものであり、かつ、グリコール酸分率の高い構造を合成する新規な方法を与えた。グリコール酸ポリマーは高い加水分解性を持つことで知られることから、PHAに加水分解性を付与する効果が期待された。これらの成果はFrontiers in Bioengineering and Biotechnology誌に発表した。さらに、ブロック共重合体の化学構造の拡張に取り組んだ。使用している配列制御型重合酵素は、3-hydroxyhexanoate (3HHx)モノマーに弱い活性を有する。3HHxは材料に柔軟性を付与する性質がある事が知られ、PHAの重要な構成成分の一つである。そこで、進化工学的手法を用いて3HHxモノマーに対する活性が向上した変異体を創出した。こうして得られた新たな重合酵素を用いることで、3HHxモノマーから構成される新規ブロック共重合体を合成することができた。本成果はBiomacromolecules誌に発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
目的とする構造のポリマーの合成、構造解析を順調に進捗している。使用している酵素系で合成可能なポリマー構造の探索が進むにしたがって、合成不可能な構造が判明することになる。これらのポリマーを合成するため、生合成系酵素、とくに重合酵素の機能拡張が必要となる。これについても、進化工学的検討を行い、目的とする性質を持った変異型重合酵素の取得に成功している。これらのことから、研究は予定通り進捗していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
重合酵素の改変によって新たに合成可能になったポリマーについて、生合成と構造解析を進める。種々のモノマー構造の組み合わせ・割合を変化させた共重合体を合成し、合成可能な構造と得られるポリマーのモノマー配列を明らかにする。加えて、得られたポリマーの物理的性質についても調べる。ポリマーの性質は、モノマー組成や配列といったポリマーの一次構造だけでなく、結晶化度や相分離といった二次構造にも大きく影響される。二次構造はポリマーの調整方法によっても変化するため、得られたポリマーをアニーリングなどの処理により二次構造を制御し、構造と物性の関係性を明らかにする。これらの検討を通じて、従来型のPHAとは区別される優れた物性を示す新規材料の創製を目指す。
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