研究課題/領域番号 |
20H04388
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配分区分 | 補助金 |
研究機関 | 千葉大学 |
研究代表者 |
永瀬 彩子 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 准教授 (80544535)
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研究分担者 |
上原 浩一 千葉大学, 大学院国際学術研究院, 教授 (20221799)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | 都市生態系 |
研究実績の概要 |
本研究では、DNAマルチプレックスバーコーディング法によるデータベースを作成し、調査地にて網羅的に収集したサンプルを集計し、都市における植物と昆虫、鳥などの生物種間ネットワーク構造を解析し、それを可視化した模式図をつくる。都市生態系の中で重要な役割を果たしている、送粉者、草食性や広食性の昆虫、鳥に着目し、それぞれの動物と植物の種間相互作用を明らかにする。2020年度は、ツバメとムクドリに着目して捕食昆虫の調査を行った。ツバメでは、東京においてはヤドリバエ・ニクバエが多く、千葉においてはショウジョウバエ科の昆虫が多かった。ヤドリバエやニクバエの幼虫は他の昆虫に寄生することが知られており、寄生した昆虫をツバメが捕食した可能性が考えられる。千葉ではショウジョウバエが多くみられたが、発酵した果実や酢、生ごみ等に集まる習性がある。人家周辺に生息する種が多く、一軒家や農地が多くみられた千葉で多く確認できたものと考えられる。また、東京ではカシノナガキクイムシが確認できた。カシノナガキクイムシは広葉樹を枯らす害虫であり、東京都内においても都立公園等で複数の被害が確認されている。また、千葉のみでトビケラ目の昆虫が確認できた。トビケラは水生昆虫であり、サンプル採集地点の付近に流れていた花見川に生息していたと考えられる(渡邉, 2021)。ムクドリについては、1地点のみであったが、ツバメと比較するとチョウ目の昆虫を多く捕食していた。ムクドリの特徴として、ヒトリガやヤガなど夜行性のチョウ目の昆虫を多く捕食していた。さらに、ムクドリの植物食の食性に関しては樹木、草本両方を捕食しており、ムクノキ・ヒラマメ・コバノチョウセンエノキが示された(吉本,2021) 。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度はDNAバーコーディングの作成を行う予定であったが、昆虫や植物の調査の範囲を絞るために先に鳥と昆虫・植物の調査を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は、2020年度に行ったツバメとムクドリの調査の続きを行う。さらに、2020年度に行った調査結果をもとに、ツバメやムクドリの調査地および半径2キロメートル周辺において、春と秋の2回、主要な植物および昆虫を採集し、DNAバーコーディングデータベースを作成する。本研究では、次世代型DNAシークエンサーを使用した最新のマルチプレックスバーコーディング法を用い、対象地域で網羅的に収集した植物のサンプルを分析する。マルチプレックスバーコーディング法により従来のrbcL遺伝子、matK遺伝子に加え、葉緑体DNAの trnLF領域、psbA-trnH領域、核DNAのITS 1,2領域の塩基配列を決定することで、これまでより詳細な、新たなDNAバーコーディングデータベースを作成することが可能である。すなわち、マルチプレックスバーコーディング法を用いて独自に作成した植物の DNAデータベースと照合することで、今までよりも正確に植物種を特定することを目指す。
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